
更新交渉はまだ本格的にテーブルに乗っていない。チームの心臓であり続けてきた男の去就に、暗雲というにはまだ早いが、小さな影は確かに差し始めている。編成トップに就いたばかりのバッチンが水面下で動かしているのは、後継者探しという名の保険だった。白羽の矢が立ったのは、セリエAで台頭中のカリアリが誇る19歳MF、アレッサンドロ・ロマーノ。しかもその争奪戦の相手は、よりによって宿敵ユヴェントスという皮肉な構図―――
事の発端は、ハカン・チャルハノール(Hakan Çalhanoğlu)の契約更新交渉が一向に進んでいないことだ。地元紙トゥットスポルト(Tuttosport)によれば、来年2月に33歳を迎えるチャルハノールは、チーム屈指の高年俸選手でありながら、更新に向けた具体的な話し合いはまだ始まっていない。トルコ国内クラブからの誘いも囁かれており、キャリア終盤を故郷で過ごす選択肢が完全に消えたわけではないという。
コリエレ・デロ・スポルト(Corriere dello Sport)も同日、同様の構図を伝えている。インテルはピエロ・アウジリオの後任としてチーフ・スポーツ・オフィサーに就いたダリオ・バッチンを中心に、チャルハノールへ「現行より低い年俸に、出場試合数に応じた変動要素を組み合わせた新条件」を提示する方向で検討中だという。代理人ゴードン・スティピッチとの協議自体はまだ始まったばかりの段階とみられる。なお、契約が正確にいつまで残っているかについては媒体によって表現の揺れがあり、元記事では確定的な満了年は明記されていない。
このタイミングで浮上したのが、カリアリに所属する19歳MFアレッサンドロ・ロマーノの名前だ。イタリア・スイスの二重国籍を持ち、ロベルト・マンチーニ率いるイタリア代表入りを選んだ若手で、9月12日のアタランタ戦にはインテルのスカウト担当者が視察に入っていたことも既に伝えられている。バッチン自身は先日「名前を挙げるのは時期尚早」と慎重な言い回しに終始したが、トゥットスポルトは今回、ロマーノをチャルハノールの将来的な後継候補として明確に位置づけた。しかもこの争奪戦にはユヴェントスも名乗りを上げており、セリエA屈指のライバル対決に発展する可能性が出てきている。
原文: "Romano? Fare nomi è prematuro, il monitoraggio, appunto, è quotidiano e siamo attenti su tutti i campi."
訳: 「ロマーノについて?名前を挙げるのはまだ時期尚早だ。とはいえ視察は日常的に行っているし、あらゆるピッチに目を光らせている」
※この発言はダリオ・バッチンが9月14日のスカイ・スポルトのインタビューで残したもので、今回のトゥットスポルト報道より前のものだが、インテルの姿勢を象徴する言葉として引用した。
チャルハノールの契約状況だけを切り取れば、まだパニックになる段階ではないと考えられる。年俸650万ユーロという水準は、33歳に近づく選手への投資としては決して軽くなく、インテルが「金額を抑えつつ出場ベースの変動要素を足す」という現実的な着地点を探っているのは、むしろ健全な交渉戦略と言えるかもしれない。ただし、トルコ側の誘いが具体的な提案として存在するのであれば、悠長に構えていられる時間は多くないとも推察される。
ロマーノはまだセリエAでの出場実績が限られる19歳であり、即座にチャルハノールの穴を埋められる存在ではないと考えられる。むしろ2〜3年単位で育成しながら段階的に出場機会を与えていく「将来への保険」としての獲得と見るのが自然だろう。ポジションは中盤の底が本職とされるが、キブ監督が志向する3-5-2のインサイドハーフとして育成されるのか、それとも将来的なアンカー要員として想定されているのかまでは、元記事では言及されていない。いずれにせよ即戦力というより数年がかりの投資と捉えるのが妥当かもしれない。
わざわざライバルのユヴェントスと競合してまで19歳の無名に近い若手を追いかける姿勢は、バッチン体制が掲げる「イタリア人選手を軸としたコア戦略」の一端が早くも表れたものと考えられる。オークツリー体制下でのコスト管理を意識しつつ、育成型の補強で将来の主力候補を安く確保しておく狙いがあるのだろう。実際に争奪戦を制せるかどうかは別問題だが、契約更新交渉と並行してこうした保険的な動きを進める姿勢自体に、編成部門の本気度が表れていると言えるのではないか。
契約更新の停滞、トルコの誘い、そして後継候補としてのロマーノ争奪戦。三つの糸が絡み合う中で、インテルの編成陣が見ているのは目先の一年ではなく、その先の数年だろう。チャルハノールというピースが盤上から消える日に備え、静かに次の一手が積み上げられている。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年9月23日
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