
昨夏はガラタサライ、そして今夏はフェネルバフチェ。ハカン・チャルハノールとトルコ国内クラブを結ぶ噂は、まるで季節の風物詩のように毎年ボスポラス海峡から吹いてくる。だが今回は、これまでと少しだけ手触りが違う。相手クラブのスポーツディレクターがミラノまで足を運び、具体的な金額の輪郭までが伝わってきた。そしてインテルは、その存在そのものを否定している。
FCInterNewsが複数のトルコメディア、なかでもFotoMacの報道として伝えたところによれば、フェネルバフチェのスポーツディレクターであるチハン・カメル(Cihan Kamer)が近日中にミラノを訪れていたという。第一の目的はACミランとの関係が冷え込んでいるラファエル・レオン(Rafael Leão)にイスタンブール移籍の意思を確認することだったが、同じ機会にインテル側とも接触し、チャルハノールの交渉が成立し得るかを探ったとされる。
インテルの反応は、少なくとも報道ベースでは冷淡ではなかった。ヴィアーレ・リベラツィオーネ(クラブ本部)は、トルコ側が2000万ユーロ前後まで踏み込めば交渉が動く可能性を示唆したと伝えられている。一方のフェネルバフチェが用意しているのは1500万ユーロ。500万ユーロの溝は、8月の移籍市場においては決して埋まらない額ではない。
ところが翌3日、Corriere della Seraがイタリア各クラブの市場を横断的に扱った記事のなかで、インテル側の言い分を伝えた。トルコからの接近など受けていない、というのがクラブの公式スタンスである。報道と否定が同じ48時間のなかに並んで存在している。
なお、Sport Mediasetは同選手の評価額を2500万〜3000万ユーロのレンジで伝えており、数字には媒体間で幅がある。現時点で「確定した価格」は存在しないと見るのが妥当だろう。
原文: "L'Inter smentisce però di aver ricevuto approcci per il suo giocatore di fantasia"
訳: 「もっとも、インテルは自軍の創造性を担う選手について、いかなる接近も受けていないと否定している」
原文: "vorrebbe giocare da noi"
訳: 「彼はうちでプレーしたがっている」(フェネルバフチェ会長アズィズ・ユルドゥルムに対するチャルハノール本人の言葉とされるもの)
1994年生まれ、契約は2027年まで。この二つの条件が並んだとき、クラブ経営の教科書はひとつの答えを出す。2027年夏にフリーで出ていかれる前に、今夏か来冬に現金化せよ、というものだ。インテルが2000万ユーロという水準を示唆したとされるのは、その教科書に忠実な数字だと考えられる。32歳のレジスタに対する市場相場としては安くないが、資産の残存価値を考えれば強気とも言えない。
一方でフェネルバフチェの1500万ユーロは、「本人が来たがっている」という前提に立った買い叩きの匂いがする。選手の意思が売り手の価格を押し下げるのは移籍市場の常道であり、ユルドゥルム会長への「告白」がトルコ紙経由でこのタイミングに流れたこと自体、交渉術の一部である可能性は否定できない。
現実的な問題として、クリスティアン・キブ(Cristian Chivu)の中盤からチャルハノールが抜けた場合の代替案が見えない。今夏のインテルは右サイドのアタッカーと中盤の駒を「追加」で探している段階であり、レジスタの後継を「補充」する計画ではない。カーティス・ジョーンズ(Curtis Jones)の名前が挙がってはいるが、あれはボックス・トゥ・ボックスの補強であってチャルハノールの代役ではない。
つまり2000万ユーロを受け取った瞬間、インテルはもう一枚の指揮者を市場で探さなければならなくなる。8月最初の週にその作業を始めるのは、キブにとって最悪のシナリオだと推察する。インテル側の否定は、単なる形式的なものではなく、実務上の切実さから出ているとも読める。
トルコ人選手にとって国内リーグでプレーすることは、キャリアの締めくくりとしてしばしば語られる。チャルハノールがこれまでその物語を一度も選んでこなかったのは、ミラノでまだ勝てるものがあると判断してきたからだろう。FCInterNewsも、直近のドブレーテ(2冠)を挙げながら、彼が中盤の灯台としての地位を手放していないと指摘している。
ならば今回も答えは同じかもしれない。ただし、契約満了まで残り1年という時計だけは、去年とは違う速さで進んでいる。
報道と否定が同居する8月初旬。数字は出そろい、当事者の言葉とされるものまで流れてきた。それでもインテルは首を振っている。トルコ側のオファーが翌週中に届くというのなら、この物語の真偽は、思ったより早く判明するはずだ。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月3日
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