
代表から外された男は、笑って済ませなかった。ガゼッタの筆によれば、マルクス・テュラムはパルマ戦の61分間、ピッチの上で何通ものメッセージを送り続けていたという。宛先は生まれ故郷のクラブ、指揮官のキブ、そして代表監督のジダン。3週間の中断明け最初の90分が、一人のストライカーが差し出した無言の返信状。
10月11日、FC Inter 1908がガゼッタ・デロ・スポルト紙(ジャンニ・パンピネッラ記者)の記事を伝えた。10日のパルマ戦で、マルクス・テュラム(Marcus Thuram)は攻撃陣のなかでも際立った存在だったという。前線のあらゆる場所に顔を出し、パルマの守備陣は最後まで捕まえきれなかった。得点は外側から放った低く強い一撃で、試合を事実上決めたと書かれている。
同紙はこの90分を「メッセージ」という言葉で読み解く。ひとつ目は、生まれ故郷のパルマに向けた「どこか意地悪な」態度。ふたつ目はクリスティアン・キブ(Cristian Chivu)監督に向けたもので、この先も彼抜きでは戦えないと悟らせた。みっつ目が、中断期間にフランス代表から外したジネディーヌ・ジダン(Zinedine Zidane)に対するものだ。家族ぐるみの旧友でもあるジダンに、代表の外にいることを受け入れるつもりはないと伝えた、という筋書きになっている。
テュラムは中断期間を調子の回復と休養に充てたという。インテルはこの先、次の中断までの29日間で9試合を戦う。ガゼッタによれば、テュラムはサン・シーロのホーム戦で6試合連続ゴールを記録した。
原文: "Thuram ha passato 61 minuti a mandare messaggi."
訳: 「テュラムは61分間、メッセージを送り続けた」
原文: "Per chiudere, ha detto a un vecchio amico di famiglia, Zizou Zidane, che non si rassegnerà a stare fuori da Clairefontaine"
訳: 「締めくくりに、家族の古い友人であるジズー・ジダンに、クレールフォンテーヌの外にいることには甘んじないと伝えた」
ガゼッタは、テュラムがブルッヘ戦の先発復帰の最有力候補だと見ている。ラウタロ・マルティネス(Lautaro Martínez)との2トップが戻れば、中断前に見られた組み合わせの再現となる。9試合29日間という日程を考えると、2トップのどちらか、あるいは両方を休ませる局面も出てくると考えられる。その中で「先発が確実だった唯一の男」という評価は、序列の確認と読める。同紙は、味方よりも決まった立ち位置を持たず、広く動き回って、以前なかった感覚でゴールに迫っているとも評している。
代表から外された選手が、クラブで目に見えて奮起する。珍しい光景ではないが、ガゼッタの筆致は少し文学的だ。紙面の「メッセージ」は取材で拾った本人の言葉というより、筆者が試合から読み取った解釈と考えるほうが自然で、ジダンへの伝言も実際に交わされたとは限らない。だから過剰に受け取らず、「ピッチ上の姿勢がそう見えた」と読むのが妥当だろう。ただ、朝の記事で取り上げたレオ=コーカーの「凄みが欲しい」という注文に、結果で応えた一戦になった可能性はある。
テュラムはパルマ生まれで、父リリアンもかつて同クラブでプレーしている(背景知識)。生まれ故郷を相手にゴールを決める複雑さは想像に難くないが、ガゼッタの言う「どこか意地悪な」態度が、実際にどの場面を指すのかは元記事からは分からない。同紙はラウタロやピオ・エスポージトとも良好な関係にあると記しており、チーム内の空気は悪くないと考えられる。個人の意地と集団の調和が両立している点こそ、今のテュラムの強みなのかもしれない。
ジダンへの返事も、キブへの売り込みも、結局は90分間の仕事ぶりでしか届かない。笑顔の裏で火を点けたテュラムは、クラブ・ブルッヘ戦のピッチで次のメッセージを何と綴るのか。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年10月11日
© 2025 nero15.dev. All rights reserved.