
ウディネーゼ戦のマッチデイ・プログラムで、左のウイングバックが引き出しの中身を開けた。少年時代に踏んだ最初のピッチ、センターバックなのにPKで決めた最初のゴール、そしてマラカナンで交換した一枚。数字でも移籍金でもない言葉が並ぶなかに、彼がインテルで何を学んだかがそのまま置かれていた。
[[インテル・ミラノ]]が[[ウディネーゼ]]戦に向けて発行したマッチデイ・プログラムに、[[カルロス・アウグスト]](Carlos Augusto)のインタビューが掲載された。契約や序列の話ではなく、キャリアの原点と、この数年の実感を語る内容である。
彼はまず、インテルでの日々を「特別な年月」と表現し、ここで最初に学んだのはこのグループが本当に家族だということだったと述べた。そこから、これまで交換したユニフォームのうち最も大切にしている一枚の話になる。それはアルゼンチン代表の[[ラウタロ・マルティネス]]のものだという。ブラジル代表として、マラカナンで戦った試合のあとに交換した一枚だった。
回顧はさらに遡る。人生で最初にプレーしたピッチは、生まれ故郷であるカンピーナスにあった。最初のゴールはPKによるもので、しかも当時の彼はセンターバックだった。子どものころはほぼすべてのポジションを経験したという。当時の憧れは[[マルセロ]]のプレースタイルだった。プロになれると確信したのは[[コリンチャンス]]の下部組織に上がったときで、そこで出会った指導者が彼をサイドの攻撃的な位置から最終ラインへと決定的に移している。
インテルの歴史で最も敬服する選手を問われると、答えは[[ハビエル・サネッティ]]だった。名前だけで十分で、説明はいらないという言い方をしている。
原文: "Questi anni all'Inter sono speciali: la prima cosa che ho imparato qui è che questo gruppo è davvero una famiglia. Se penso infatti alla maglia che ho scambiato a cui tengo di più è molto speciale: è quella di Lautaro dell'Argentina, dopo una partita con il Brasile al Maracanã."
訳: 「インテルでのこの数年は特別だ。ここで最初に学んだのは、このグループが本当に家族だということだった。実際、交換したユニフォームのなかで一番大切にしている一枚を思い浮かべると、それはとても特別なものだ。ブラジル代表としてマラカナンで戦ったあとに受け取った、アルゼンチン代表のラウタロのユニフォームだ」
原文: "Il campione che ho ammirato di più nella storia dell'Inter è sicuramente Javier Zanetti: basta il nome, senza spiegazioni."
訳: 「インテルの歴史のなかで最も敬服してきた選手は、間違いなくハビエル・サネッティだ。名前だけで足りる。説明はいらない」
センターフォワード、サイドの攻撃的なポジション、サイドバック、センターバック。カルロス・アウグストが列挙した少年時代のポジション遍歴は、そのまま現在の彼の職能の内訳になっている。インテルの[[3-5-2]]における左のウイングバックは、最終ラインに吸収されて3バックの外を埋めるかと思えば、次の局面ではペナルティエリアに入っていく。攻守どちらかに寄せた育ち方をした選手には、その往復が負担として残る。
コリンチャンスの下部組織で「サイドの攻撃的な位置から最終ラインへ」移されたという一節は、その意味で重要だ。彼は攻撃の人間として出発し、守備の人間として完成させられた。攻撃の記憶を持ったまま守備の作法を身につけた選手は、ウイングバックという職種において最も潰しが利く。同じ左サイドを争う[[フェデリコ・ディマルコ]]がクロスと精度で価値を出すのに対し、カルロス・アウグストが3バックの一角まで担える理由も、この育ち方に由来すると考えられる。
チームメイトのユニフォームは、いつでも手に入る。だが代表戦で敵として相対したチームメイトの一枚は、一度きりだ。カルロス・アウグストがラウタロのアルゼンチン代表ユニフォームを挙げたのは、単なる仲の良さの表明ではないだろう。ブラジルとアルゼンチンがマラカナンで戦う日、クラブでの関係はいったん保留される。その保留のあとに交わされた一枚だからこそ、彼の言う「家族」という言葉に厚みが出る。
インテルの更衣室がなぜ機能しているのかという問いに、戦術的な答えはない。ただ、南米の2大国の代表として敵同士になった翌日にまた同じロッカーに戻る選手たちが、その往復を摩擦なく処理できているという事実は、外から見えるよりずっと難しいことをやっている証拠だと推察される。
最も敬服する選手を問われて、彼は説明を拒んだ。「名前だけで足りる」という言い方は、賛辞としては最短で、最も強い。興味深いのは、カルロス・アウグストがサネッティの現役時代を生で追った世代ではおそらくないという点だ。1999年生まれの選手にとって、サネッティの全盛期は物心つく前後にあたる。
それでも名前が基準として残っている。クラブが副会長というポジションに彼を置き続けている効果もあるだろうが、より本質的には、サイドを走り続けるという職業の理想形が一人の人物に集約されているからだと考えられる。左のウイングバックとしてインテルで数年を過ごした選手が、その基準を口にする。系譜というのは、そういう形で継がれていくのだろう。
契約や序列の話は、いずれまた別の日に出てくる。この日の彼が語ったのは、カンピーナスのピッチとマラカナンの一枚と、説明のいらない名前だけだった。数字で測れないものばかりを並べた選手が、今夜もサン・シーロの左サイドを往復する。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年9月14日
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