
一年前、この男は自分からインテルを出て行きたいと言った。内部での軋轢を抱え、マルセイユへ貸し出され、高額な年俸ゆえに買い取られることもなく、行き場を探して古巣に戻ってきた。その男が、日曜のカリアリ戦で三バックの一角に立とうとしている。バンジャマン・パヴァールをめぐるこの一年は、放出リストと先発リストのあいだの距離がいかに短いかを教えてくれる。
『La Gazzetta dello Sport』によれば、クリスティアン・キブはカリアリ戦に向けた練習で、パヴァールを先発の11人に組み込んで試したという。起用位置は三バックの右寄り、いわゆるセントロデストラである。
問題は誰の枠を奪うかだ。開幕のモンツァ戦ではヤン・ビセックとマヌエル・アカンジがともに先発している。パヴァールが入る場合、ビセックが外れるか、あるいはアカンジが中央にスライドしてビセックが外れるか、いずれかの形になると見られている。
この一年の経緯は決して穏やかなものではなかった。昨夏、パヴァールは内部の緊張を理由に自ら放出を求め、マルセイユへレンタル移籍。インテルは代役としてアカンジを獲得した。しかしマルセイユは高額な年俸を主因に買い取り権を行使せず、パヴァールはミラノへ戻ってきた。クラブ側も新たな移籍先を探し、トッテナムのクリスティアン・ロメロとの交渉にまで踏み込んでいる(ロメロは後にアトレティコ・マドリードへ移籍した)。
流れが変わったのは、夏のキャンプとツアーだった。この期間のパヴァールは意欲的で、内容も明るかった。それがキブの判断を動かしたと伝えられている。
原文: "Pavard ha cambiato atteggiamento: durante il ritiro e la tournée estiva si è mostrato molto coinvolto e brillante, convincendo Chivu a concedergli una nuova opportunità."
訳: 「パヴァールは態度を変えた。合宿と夏のツアーを通じて強い当事者意識と輝きを見せ、キブに新たな機会を与える気にさせた」
編成の観点から見れば、この夏のインテルはパヴァールを「売りたかったが売れなかった」クラブに見える。ロメロとの交渉に踏み込み、代理人が国外での移籍先を探していた事実がそれを裏づける。だが結果として、市場閉幕を迎えるインテルの手元には、CBと右サイドを兼務できるワールドカップ優勝経験者が残った。
高額な年俸は帳簿上の負担であり続ける。一方で、UEFA登録リストに一枠の余裕を残したまま市場を閉じるクラブにとって、複数ポジションをこなせる経験者の存在は保険として機能する。売却が実らなかったことが、結果的に層の厚みに転じた可能性がある。
キブの3-5-2において、三バックの右は最も攻撃参加の頻度が高い守備者だ。相手のブロックを外側から広げ、時にウイングバックを追い越す。ビセックの強度、アカンジの配球とは異なり、パヴァールは元来が右サイドバックであり、外側のレーンでの振る舞いに慣れている。
同じ試合でアンディ・ディウフが右のウイングバックに入る案が出ていることを踏まえると、この二人の縦関係は新しい組み合わせになる。ディウフは本職が中盤であり、外側の高い位置での距離感にまだ課題を残す。その背後を、サイドバック経験の長いパヴァールが埋める設計だとすれば、この起用には戦術的な合理性があると考えられる。
自分から出て行った選手が戻ってきて、しかも先発に立つ。この構図をどう受け止めるかは、常にファンにとって難しい問題だ。ただ、インテルというクラブは歴史的に、去った者を再び受け入れることに寛容な側面を持ってきた。重要なのは、戻ってきた選手がピッチで何を返すかだけである。
夏のあいだにパヴァールが示したという「当事者意識」は、数字として測れるものではない。だがカリアリのウニポル・ドムスは、その真偽を測るには十分に手強い舞台になるはずだ。
一年前に扉を閉めた男が、いま同じ扉から入ろうとしている。キブが差し出したのは温情ではなく、機会だ。この90分で彼が示す姿勢こそが、去年の自分への回答になる。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月30日
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