
パースの会見場で、質問は淡々と投げられた。ワールドカップ明けでまだ休暇中の選手たちを、開幕までにどう戻すのか。監督の答えは、慎重な言葉づかいのなかに、はっきりとした結論を含んでいた。トロフィーを2つ抱えて迎えるはずの新シーズン、その最初の90分に、去年チームを牽引した2人の名前がないかもしれない。8月の親善試合に意味はないと言い切った男が、唯一濁さなかったのがこの一点だった。
8月4日、オーストラリア・パースで行われた[[ACミラン]]との親善ダービー前日会見に、[[インテル・ミラノ]]を率いるクリスティアン・キブ(Cristian Chivu)が姿を見せた。会見の主題は当然ながら翌日のダービーだったが、記者の関心はむしろ、遠く離れたミラノで8月22日に迎える公式戦初戦のほうにあった。
問われたのは、ワールドカップを終えてまだ休暇に入っている選手たちの復帰プランである。キブは「開幕戦に間に合うとは思っていない」という趣旨の回答をし、復帰までにどれだけ時間が必要か見極める必要があること、そして無理をさせるつもりはないことを付け加えた。[[FCInterNews]]はこの発言を受け、見出しで「モンツァ戦にThuLa(トゥーラ)はいないだろう」と表現した。ThuLaとはテュラムとラウタロの名を組み合わせたイタリア語圏の愛称で、インテルの2トップを指す。
ただし押さえておくべきは、キブ自身が[[ラウタロ・マルティネス]]と[[マルクス・テュラム]]の名前を一度も口にしていないという点だ。質問は「W杯後にまだ休暇中の選手」全体に向けられたもので、誰が該当するかを監督は特定していない。ThuLaという名指しはFCInterNewsによる解釈であり、記事内でも監督の逐語発言と区別して読む必要がある。
原文: "Dubito che saranno pronti per la prima di campionato, vediamo quanto tempo servirà per rimetterli in campo, non vogliamo esporci a troppi rischi. Non è semplice."
訳: 「開幕戦に間に合うとは思っていない。ピッチに戻すまでにどれだけ時間が必要か、これから見極める。過度なリスクにさらすつもりはない。簡単な話ではないんだ」
原文: "Mi accontento del fatto che qualche giocatore a questo punto della preparazione farà qualche minuto in più, sempre attenti a capire se abbiamo smaltito il fuso orario e quanti rischi possiamo correre."
訳: 「準備段階のこの時期に、何人かが少し長くプレーできる。それで十分だ。時差が抜けたかどうか、どこまでリスクを冒せるかは常に見ながらやっている」
同じ会見でキブは、翌日のダービーについて「8月のトロフィーには何の意味もない」と言い切っている。昨季ダービーを2つとも落としながらスクデットを獲ったチームの監督としては、筋の通った態度だ。プレシーズンの結果に一喜一憂しない、見ているのは開幕以降だ、という宣言でもある。
だからこそ、その同じ口から出た「開幕戦には間に合わないと思う」が重く響く。8月のことは気にしないと言った人物が、唯一気にしていると認めたのが復帰組のコンディションなのだ。この落差は、単なる調整の遅れという以上の意味を持つと考えられる。ワールドカップ明けの選手をどう扱うかは、シーズン全体の設計に関わる問題であり、9か月先まで見据えた判断であるはずだ。開幕2試合を捨ててでも12月に万全でいるほうがいい、という計算が背後にある可能性はある。
仮にラウタロとテュラムがモンツァ戦に間に合わないとすれば、前線は既存戦力の組み替えで乗り切ることになる。プレシーズンで存在感を示してきた[[ピオ・エスポージト]]、そして[[アンジュ=ヨアン・ボニー]]の名が現実的な候補として浮かぶ。ボニー自身もワールドカップ後の遅れた合流組に含まれていたと7月末に報じられており、彼のコンディションもまた読みきれない要素ではある。
中盤も同様だ。7月下旬の時点で遅れて合流する見込みと伝えられていたのは、[[ハカン・チャルハノール]]、ボニー、[[ペタル・スチッチ]]、[[マヌエル・アカンジ]]の4人である。このうちアカンジについては8月4日のピネティーナ合流が前日に報じられており、少なくとも1人は動き出している。3-5-2という枠組み自体は動かさないとしても、開幕の11人は昨季の完成形とは別物になると推察される。プレシーズンで長い時間を得ている若手にとって、これは単なる練習試合ではなくなる。
会見でキブは、セリエAの公式戦を国外開催する構想についても踏み込んだ見解を述べている。実現するなら開幕節に置くべきだ、ツール・ド・フランスが最初のステージを国外で行うように、というのが彼の提案だ。1週間前に現地入りして1試合を消化し、帰国して第2節から通常運転に戻す。移動負荷を最小化する現実的な設計である。
イタリアサッカーの国際的な発信力を高めることには賛成しつつ、選手のコンディションを盾に無条件の賛意は示さない。この立ち回りは、まさに彼が同じ会見で復帰組について語った慎重さと同じ手つきだ。ルーマニア人監督の1年目は、勝ち方を知っている監督だという評価とともに終わった。2年目の入り口で見えているのは、勝つための引き算を先に済ませておこうとする指揮官の顔である。
トロフィーを2つ持って迎える夏に、監督が語ったのは高揚ではなく管理だった。開幕戦にエースがいないかもしれない。それを事前に言ってしまう指揮官は、少なくとも8月の見栄えのために9か月を犠牲にする気はないということだろう。モンツァ戦の11人が、キブの2年目を占う最初の答案になる。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月4日
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