
チャンピオンズリーグの鮫と戦うためには、と書き出したLa Gazzetta dello Sportは、その比喩の出どころとしてジョゼ・モウリーニョ(José Mourinho)の名を添えた。皮肉が効いているのは、当のモウリーニョがこの夏、再び大魚の泳ぐ海へと戻ってきたからである。そして同紙が示したインテルの補強予算は5000万ユーロ。国内で戦うには十分かもしれない。だが、その先には別の結論が待っている。
オーストラリア遠征中のインテルは、まだ編成を終えていない。ただしそれは今の時期、どのクラブも同じである。La Gazzetta dello Sportは3日、そうした状況のなかでクラブ内部に共有されている「原則」を伝えた。凡庸な選手は要らない。すでに強いグループをさらに良くし、若手の成長を助けられるプロファイルだけを取る、というものだ。
同紙が名前を挙げたのは、ピオ・エスポージトと同じ2005年生まれのアレクサンダル・スタンコビッチ、そして若手アタッカーのマッティア・モスコーニとマッテオ・ラヴェッリ。彼らの質と物怖じしなさが、オークツリー(Oaktree)の描く将来像を刺激しているという。ただし同紙は同時に釘を刺す。若者には、実績ある選手の隣で自分のペースでディテールを学ぶ権利がある、と。
そしてクラブの財布の話になる。放出による増収を除いた現時点で、インテルが動かせるのは5000万ユーロ。パリ・サンジェルマン、バイエルン・ミュンヘン、イングランドとスペインの強豪に近づくには、明らかに足りない額である。
原文: "l'Inter dispone di un budget di 50 milioni che certamente non è abbastanza per avvicinare il Psg, il Bayern, le grandi d'Inghilterra e di Spagna."
訳: 「インテルが持つ予算は5000万ユーロであり、PSGやバイエルン、イングランドとスペインの強豪に近づくには明らかに足りない」
原文: "per giocare un torneo migliore della scorsa stagione, rovinato dalla doppia sconfitta con il Bodo nei playoff, potrebbe essere sufficiente la squadra attuale. Per sognare, no."
訳: 「ボドーとのプレーオフ2連敗で台無しになった昨季より良い大会を戦うだけなら、現有戦力で足りるかもしれない。夢を見るには、足りない」
数字だけを見れば、5000万ユーロは決して小さくない。だが今夏のインテルが抱えている穴を並べると、印象は変わる。デンゼル・ダンフリースが去った右サイド、放出候補が並ぶ中盤、そしてクリスティアン・ロメロ級のセンターバックを迎えるための資金。ロメロだけで4000万ユーロ規模、カーティス・ジョーンズにもリヴァプールが4000万ユーロを求めているとされる。単純な足し算で、予算はすでに破綻している。
だからこそGazzettaは、放出の一部は「望ましい」と書いた。ダヴィデ・フラッテージ、クリスティアン・アスラニ、バンジャマン・パヴァールといった名前が連日紙面に並ぶのは、補強の話とセットだからである。今夏のインテルの補強力は、獲得担当の交渉力ではなく、放出担当の成約速度によって決まると考えられる。
若手を伸ばしつつ、即戦力の質も落とさない。この二兎を追う方針は理屈としては美しいが、実務では最も難しい部類に入る。若手に時間を与えるには試合が要り、質を担保するには実績ある選手が必要で、その両方を同じロスターに詰め込めば必ず誰かが不満を抱える。
Gazzettaが「若者には自分のペースで学ぶ権利がある」とわざわざ書いたのは、この方針が育成の名を借りた節約に転じる危険を意識しているからだろう。スタンコビッチがプレシーズンで見せた出来は確かに目を引くものだったが、2005年生まれの選手にチャンピオンズリーグの重責をいきなり背負わせるのは育成ではない。オークツリーが求める「規律ある投資」と、キブが求める「勝てる駒」の距離感が、この夏の最大の論点だと推察する。
同紙が引き合いに出した2つの記憶は対照的である。ひとつは昨季、プレーオフでボドー/グリムトに2連敗して大会を棒に振った屈辱。もうひとつは1年半前、シモーネ・インザーキ率いるインテルがバイエルンとバルセロナを退けてミュンヘンの決勝に辿り着いた高揚。財政規模がほとんど変わらない同じクラブが、両方を経験している。
この対比が示すのは、欧州における結果と予算の相関が思ったほど強くないという事実だ。もちろん資金は多いに越したことはない。だが5000万ユーロで足りないのは「夢」であって、「勝ち上がり」ではないのかもしれない。Gazzettaの結びの一文は、悲観というより、インテルというクラブが持つ矛盾そのものを言い当てている。
凡庸な選手は要らないと言い切りながら、財布には5000万ユーロしかない。この落差を埋めるのが直観とアイデアだ、というのが同紙の処方箋である。ならば問いはひとつに絞られる。ジュゼッペ・マロッタとピエロ・アウジリオは、この8月にどんな発想を見せてくれるのか。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月3日
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