
26歳のフランス出身ウイング、ムサ・ディアビー(Moussa Diaby)。2026年1月、インテルがサウジから連れ戻そうとして失敗した男が、この夏、再び交渉のテーブルに戻ろうとしている。アストン・ヴィラから6,000万ユーロでアル・イティハド(Al-Ittihad)へ渡ったのが2024年夏。それから1年半、サウジの空気は彼から熱を奪った。クリスティアン・キブ監督が「具体的に欲しい」と要望した男の現在地と、ネラッズーリが描く設計図。
ディアビーを一言で表せば、**「サイドの直線を破壊するスピード型」**となる。170cmと小柄な身体で、左足での持ち出しから右サイドのカットイン、あるいは縦突破でクロスを送る。複数の英語媒体が「フランスのスピードスター」と呼んできたように、加速力こそが彼の代名詞である。アタッカーとしての引き出しは多く、ウイング、インサイドフォワード、シャドウストライカー、ポーチャーまで担える機動性が持ち味。チーム戦術次第で配置が変わる、いわばモバイル型の攻撃手と考えられる。
地元パリのエスペランス・パリ19eから、9歳で名門パリ・サンジェルマンの下部組織に加入。トップ昇格後の2018-19シーズンにリーグ・アンとトロフェ・デ・シャンピオンを獲得するも出場機会は限定的で、クロトーネへ短期レンタル。2019年夏、ドイツ・ブンデスリーガのバイヤー・レヴァークーゼン(Bayer Leverkusen)に完全移籍したのが転機となる。ここで4シーズンプレーし、2022-23シーズンは1.ブンデスリーガのチーム・オブ・ザ・シーズンに選出された。2023年夏にプレミアリーグのアストン・ヴィラへ移籍金約5,500万ユーロで加入したものの、わずか1シーズンでサウジへと向かった。アル・イティハドへの移籍金は6,000万ユーロ。サウジ・プロリーグおよびキングス・カップ制覇に貢献した一方、出場機会は徐々に細ってきている。
25-26シーズン(サウジ・プロリーグ、進行中)の主要数字を整理する。
出場時間は確保しているが、ゴール数はキャリア平均を大きく下回っており、サウジ移籍前の質を取り戻せていないことが数字に表れていると推察する。アシスト6は標準的な水準だが、レヴァークーゼン時代のような爆発力ある攻撃貢献からは距離がある。退場2回も気がかりで、コンディションかメンタル面に何らかの揺らぎがあった可能性は否定できない。
ディアビーがインテルの3-5-2に組み込まれた場合、右ウイングバック起用が想定される。これがそのまま機能するかは、議論の余地が大きい論点と考えられる。
3-5-2の右WBは、デンゼル・ドゥンフリースに代表されるように「縦への爆発力+帰陣の運動量」を要求される高負荷ポジション。攻撃局面ではディアビーの突破力は確実に武器になるが、守備局面で5バックの一角を形成する仕事は、彼のキャリアでメインに据えられたものではない。
参照したいのはイヴァン・ペリシッチの先例である。3-5-2の左WBで大成した男も、加入当初は「攻撃寄りすぎてWBには合わない」とされた。キブ監督がディアビーをどう変容させるか、あるいはシステム自体を可変式(4-2-3-1や4-3-3への移行)に進化させるかが鍵となる。ラウタロ・マルティネス、マルクス・テュラムの2トップに、右からカットインで合流する第三のチャンネルを開ける選手として、攻撃面の設計図には収まる素材である。
冬の市場での顛末は、現実味を測るうえで重要な前例となる。
2026年1月、インテルはローン+買取オプション3,500万ユーロを提示。アル・イティハドは即拒否した。続いてローン500万ユーロ+条件付き買取(合計3,200万ユーロ規模)を提案するも、サウジ側は完全買取以外を認めず、最終的にPIF(サウジ国家ファンド)が売却を承認しなかったことで破談となった。当時マロッタ会長は「成立確率はminimal(最低限)」と公に認めている。
この夏に向けた状況は、いくつかの点で1月とは異なる。第一に、ディアビーがアル・イティハドのコンセイソン監督下で起用機会を失い続けている。第二に、モハメド・サラーのアル・イティハド加入が報じられており、サウジ側の放出意欲を引き上げる可能性がある。第三に、ドゥンフリースの長期離脱とルイス・エンヒキの不振でインテルの右サイドが構造的に手薄になった事実がある。
ただし障壁は依然として高い。アル・イティハドは購入額(6,000万ユーロ)に近い水準を主張しうる立場で、インテルの夏の予算(4,000〜5,000万ユーロ、ガゼッタ・デロ・スポルト報)に対しては大きい。アレッサンドロ・バストーニ売却で予算が増額されない限り、完全買取での合意は容易ではないと考えられる。
仮にディアビー獲得が成立した場合、それはインテルが「ペリシッチ的な賭け」を再び打つという編成思想の表明になる。3-5-2のWBに、本来のWB職人ではない攻撃選手を組み込み、戦術側から選手を変容させる手法。アウシリオとマロッタが過去に成功させた型である。
同時に、ルイス・エンヒキの戦力外を事実上認める判断にもなる。25-26で右サイドに投じた若手のブラジル人ウインガーが期待を下回ったとき、フロントは即座に経験豊富な代替を求める。これは「育成より即戦力」という25-26のスクデット獲得経験に裏打ちされた優先順位の表れと推察できる。逆に獲得が成立しなかった場合は、フロントが想定する右サイド改造の本命が他にいる、あるいはバストーニ問題で予算が動かせない、というシグナルになる。
サウジで微熱を帯びる26歳が、メアッツァに戻ってくるか。1月の交渉が突き付けた壁は厚いが、選手本人の意志とサウジ側の起用機会の減少は、ネラッズーリにとっての追い風となりつつある。**夏の市場で動く扉は、誰の手で開かれるか。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年5月6日
© 2025 nero15.dev. All rights reserved.