
スタディオ・レナート・ダッラーラ、5月23日。73分、クリスティアン・キブ(Cristian Chivu)監督は背番号43をピッチに送り出した。マッテオ・コッキ(Matteo Cocchi)、19歳。ボローニャ下部組織で14年を過ごし、2021年にミラノへ渡ったイモラ生まれの左SBが、奇しくも古巣の本拠地でセリエA初出場を飾った。祖父はモリネッラの伝説的GKクラウディオ、父エドガルドは1989年にボローニャでアッリエヴィ・スクデットを獲得した元GK。家族3代の物語が、ダッラーラの芝生上で結晶した16分間。
コッキを一言で表せば、**「ボローニャからインテルに渡ったイモラの少年、父譲りのインテル下部組織の左SBの希望」**となる。複数の媒体が "punto fermo dell'Inter U23"(インテル U23の絶対主軸)、"uno dei profili più pronti per il salto in prima squadra"(トップチームへの跳躍に最も準備のできた選手の一人)と評価する。フェデリコ・ディマルコ(Federico Dimarco)に「役割と軌道で似ている」と頻繁に比較される左SBとして、彼はインテルが描く左サイドの未来像そのものを体現していると考えられる。
エミリア=ロマーニャ州イモラで生まれ、ボローニャ近郊モリネッラで育ったコッキは、家族3代のサッカー血筋を引き継ぐ。祖父クラウディオ・コッキは地元モリネッラの伝説的GK、父エドガルド・コッキも元GKで1989年にボローニャ下部組織でアッリエヴィ・スクデットを獲得——監督はダヴィデ・バラルディーニ(後のセリエA監督)だった。マッテオはこの家系で唯一GKではなくフィールドプレーヤーを選んだ。
地元のUS レノ・モリネッラで6歳からボールを蹴り始め、当初は中央MFや攻撃的ポジションでプレー。2015年、ボローニャFC 1909(Bologna)の下部組織にスカウトされて加入する。ボローニャ下部組織では年齢を超えて活躍を続け、2019年にはU13でフアン・ソリベラス・ヴィダル(Juan Solivellas Vidal、現インテル指導陣)の指導下でスクデット獲得。技術と判断力の高さから、ポジションを左サイドに固定された。
2021年、14歳でインテルが獲得。「小規模な投資」だったとされるこの移籍が、後に大きな価値を生むことになる。インテル下部組織でも年齢を超えてプレーし、24-25シーズンはU19プリマヴェーラ1で29試合1ゴール(ザンケッタ監督下)、UEFAユースリーグでは1ゴール1アシストを記録。プリマヴェーラ・スクデット獲得とスーペルコッパ・プリマヴェーラ優勝の両方に貢献した。
転機は2025年3月11日。インザーキ体制下でCB・SBの怪我人多発のため、シモーネ・インザーキ(Simone Inzaghi)がCL16強第2戦・対フェイエノールト戦で18歳のコッキをトップチームデビューさせた。84分にフランチェスコ・アチェルビ(Francesco Acerbi)の交代でピッチに立ち、インテルが2-1で勝利、ベスト8進出を果たした記念すべき試合だった。試合後、コッキは「世界最高の左SBはディマルコだと思う。常に彼から何かを盗もうとしている」と語っている。
2025-26シーズン、新設されたインテル U23(セリエC)に主力として参加。25試合・スーパーコッパ・プリマヴェーラ優勝を経て、2026年2月4日、コッパ・イタリア準々決勝・対トリノ戦でコッパでのトップチーム初先発(74分プレー、FotMob評価6.7)。そして2026年5月23日、ダッラーラでの古巣ボローニャ戦で、ペタル・スチッチの交代でセリエAデビュー(73分、16分プレー、FotMob評価6.4)。故郷から1時間の距離にあるピッチでの初出場は、家族3代の物語にとっても象徴的な瞬間となった。
25-26シーズンの主要な数字を整理する。U23(セリエC)とトップチームの並行運用で活動した1年だ。
| 大会 | 出場 | ゴール | アシスト | 警告 | 退場 |
|---|---|---|---|---|---|
| U23(セリエC・グループA) | 10〜11 | 1 | - | 3 | 1 |
| セリエA(トップチーム) | 1(16分) | 0 | 0 | 0 | 0 |
| コッパ・イタリア(トップチーム) | 1(74分) | 0 | 0 | 0 | 0 |
| イタリアU19代表(EURO予選等) | 数試合 | 1(コーナーキック直接ゴール) | - | - | - |
| 合計 | 12+α | 2 | - | 3 | 1 |
| シーズン | カテゴリ | 出場 | ゴール |
|---|---|---|---|
| 2023-24 | インテル U19(プリマヴェーラ1) | 29 | 1 |
| 2023-24 | UEFAユースリーグ | 4 | 0 |
| 2024-25 | インテル U20(プリマヴェーラ1) | 25 | 3 |
| 2024-25 | UEFAユースリーグ | 8 | 2 |
| 2024-25 | インテル トップチーム(CL) | 1(6分) | 0 |
| 2025-26 | インテル U23(セリエC) | 10〜11 | 1 |
| 2025-26 | インテル トップチーム(セリエA・コッパ) | 2(90分) | 0 |
Soccerway調べでインテル加入後の累計65試合・5ゴール——19歳の左SBとしては妥当な実績である。とりわけ重要なのは4つのタイトル獲得(24-25のプリマヴェーラ・スクデット、25-26のスーペルコッパ・プリマヴェーラ、25-26のコッパ・イタリア・トップチーム、そして24-25のUEFAユースリーグ準決勝経験)だ。19歳でトロフィー獲得の経験を積みつつトップチーム帯同を続けているという事実は、彼の現在の到達点として象徴的と考えられる。
コッキがインテルの3-5-2に組み込まれた場合、左ウイングバック(ディマルコ・ポジション)のバックアップが想定される。これは戦術的に極めて整合する配置と考えられる。
キブ監督下のインテル左サイドは、25-26シーズンを通じてディマルコを軸に固定された。だがディマルコ自身も27歳で、長期的な後継問題は無視できない。コッキはディマルコと同じ左利き、攻撃的なオーバーラップ志向、技術派タイプであり、まさに「次のディマルコ」候補としての位置付けが明確だ。さらにダルミアン(36歳)の契約満了による離脱、カルロス・アウグストとの競争も視野に入る。
ただし、現時点で来季のレギュラー争いに食い込めるとは言い難い。より現実的なシナリオは、トップチーム帯同を続けながらU23での主力起用を継続、もしくはレンタル移籍でセリエAまたはセリエBの中位クラブで実戦経験を積むという育成パスだ。事実、複数の媒体が「キブはコッキを長期的な評価に基づいて起用している」と分析している。2030年までの長期契約はクラブの長期投資意志の証であり、即時の主力転換よりも段階的成長が想定される。
特に注目すべきは、ボローニャ戦でのデビューがクリスティアン・キブ自身の選択だったという事実だ。キブはプリマヴェーラ監督時代からコッキを知り、年齢を超えた起用(23-24シーズンに34試合)も決断した過去がある。監督と選手の長年の信頼関係は、来季の出場機会確保において重要な要素となるだろう。
イモラに生まれ、モリネッラで育ち、ボローニャの下部組織で14年、そしてミラノへ。家族3代を貫いてきたサッカーの血筋が、19歳でセリエAデビューを古巣のピッチで迎えた。祖父はGK、父はGK、孫は左SB。役割は変わったが、ダッラーラの芝の上で家族の物語が続いた16分間。次の章は、メアッツァのピッチで始まる。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年5月24日
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