
かつてローマの象徴を本気で買いに行き、断られた男がいる。その相手のクラブと、いま自分の愛したチームが首位を分け合っている。試合まで残り30時間あまりというタイミングで、[[マッシモ・モラッティ]]が『La Repubblica』の長いインタビューに応じた。語られたのは移籍の舞台裏だけではない。和解の抱擁、病室の記憶、そして手放したスタジアムへの感情。
[[インテル・ミラノ]]の元会長[[マッシモ・モラッティ]](Massimo Moratti)が、2026年9月19日のローマ対インテルを前に『La Repubblica』のインタビューに登場した。[[FCInterNews]]が9月18日8時42分(CEST)に、[[FC Inter 1908]]が10時55分に要旨を伝えている。
序盤の見立ては率直だった。「ローマが強いときはこちらも強い、というのはもはや宿命だ」と前置きしたうえで、単発の試合の行方は読めないが、シーズンを通してならインテルを推す、と明言した。[[クリスティアン・キブ]]については「能力があり、良識があり、チームをまとめられる」と評価し、インテルの現在地については「精神力に驚かされる」と述べている。月曜のウディネーゼ戦で0-2から追いついた展開を念頭に置いた発言と読める。
しかしインタビューの核心は、過去の話に置かれていた。モラッティは[[フランチェスコ・トッティ]]の獲得を本気で試みていたと明かす。当時のローマ側の責任者だったセンシに「値段では一切文句を言わない」と伝えたところ、「その話はない」と一蹴されたという。モラッティはこの対応を「商人ではなくロマニスタとして振る舞った」と表現した。加えて、監督時代に袂を分かった[[ジャンピエロ・ガスペリーニ]]とはすでに再会し、握手して抱き合ったことも明かしている。
原文: "Dissi a Sensi che non avrei fatto storie sul prezzo. Mi rispose che non se ne parlava. Si comportò da romanista, non da commerciante."
訳: 「センシには、値段について一切文句は言わないと伝えた。返ってきたのは『その話はない』だった。彼は商人ではなく、ロマニスタとして振る舞った」
原文: "Gasperini? Ci siamo incontrati, stretti la mano, abbracciati. Non ho rancore. Lui forse sì, e sarebbe giustificato. Fu un momento sfortunato: non vincevamo una partita."
訳: 「ガスペリーニか。我々は会って、握手をして、抱き合った。私に恨みはない。彼にはあるかもしれないし、それは正当だろう。不運な時期だった。1つも勝てていなかったのだから」
ガスペリーニのインテル時代は、クラブ史のなかでも語られ方の難しい一章として残っている。就任からわずかな期間で職を解かれた指揮官が、いまローマを首位に押し上げ、古巣の前に立つ。そのタイミングで元会長が「握手して抱き合った」と公言したことの含意は小さくない。
モラッティは「恨みがあるとすれば彼のほうで、それは正当だ」とまで言った。責任の所在を相手ではなく状況と自分の側に引き受ける言い方であり、単なる社交辞令として読むには具体的すぎる。首位攻防の前夜にこの話を持ち出したことで、試合を取り巻く空気からわずかに毒気が抜けたと見ることもできるだろう。もっとも、ピッチ上でガスペリーニが手加減する理由にはならない。
「値段では文句を言わない」という申し出が、金額の交渉にすら入らず断られた。モラッティはこの逸話を、現在との対比として語っている。当時の会長たちは自らオーナーであり、口にした言葉には重みがあった。今の会長は必ずしもオーナーではなく、オーナーであればクラブを売ることを考える、と。
ここには回顧のバイアスが含まれていると考えたほうがいい。「お互いに嫌がらせをし合い、誰も間抜けに見られたくなかった」という彼自身の描写は、牧歌的な時代というよりむしろ剥き出しの力学を示している。それでも、資本の出どころがファンドやコングロマリットへ移った現在の構造と、個人が私財で情熱を賭けた時代との断絶を、当事者の言葉で確認できる資料的価値は高い。オークツリー体制下のインテルを論じるうえでも、この対比は補助線になりうる。
モラッティはレアル・マドリード戦の敗戦にも触れ、[[カーティス・ジョーンズ]]のボールロストと[[ジョゼップ・マルティネス]]のミスを「ほぼ2つのオウンゴール」と表現した。準備は良かったのに、と付け加えている。批判ではあるが、口調は責めるというより惜しむ響きに近い。
対照的に温度が高いのが、キブに関する記述である。頭部の重傷で生死が危ぶまれた際に病院を訪ねたこと、本人が不平ひとつ言わず「すぐ戻る」と語っていたこと。「勇気ある男だ」という評価は、そのまま現在の監督評価と接続されている。能力や戦術眼ではなく人間の強さを根拠に監督を信頼するという語り口は、いかにも彼らしい。数字ではなく人で語る会長の時代の記憶が、そのまま2026年のベンチへの評価に流れ込んでいる。
[[ディエゴ・ミリート]]は超えられない、と彼は言った。[[ニコロ・バレッラ]]と[[フェデリコ・ディマルコ]]がいれば三冠のチームで定位置を争えた、とも。過去を語る言葉がこれほど現在に接続してしまうのは、彼の20年がまだ終わっていない証拠ではないか。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年9月18日
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