
開幕まで11日。右サイドの空白を埋める作業が、ようやく具体的な数字を伴って動き出した。ムサ・ディアビーの交渉が高年俸とレバークーゼンの介入で滞る間、インテルが再び目を向けたのはロンドンだった。デンゼル・ダンフリースが残した背番号2の重みを、誰が引き受けるのか。ファブリツィオ・ロマーノとマッテオ・モレットが同じ日に伝えた一報は、長引いた右サイド問題がついに決着へ向かう合図なのかもしれない。
イタリア時間の8月11日13時台に動きがあった。インテルがトッテナムとクラブ間の直接協議に入り、ジェド・スペンス(Djed Spence)獲得に向けた初回提案を準備しているという。伝えたのはロマーノとモレット。移籍情報で最も精度の高い部類に入る署名が、同じ内容を同じ時間帯に出した。
この日の朝、ガゼッタ・デッロ・スポルトは一面で「インテルはスペンス」と打ち出していた。同紙によれば決着ラインは3000万ユーロ+ボーナス前後で、番狂わせがなければスペンスがダンフリースの後継者になる。クラブは開幕までに手続きを終えたい考えだ。ただし本人はストーンズ同様ワールドカップ後の休暇明けで、即戦力として計算できる状態ではないと同紙は付け加える。
インテルがスペンスから目を離したことは一度もなかった、というのがガゼッタの見立てだ。待っていたのは2つ。トッテナムが当初要求していた4000万ユーロを下げることと、スパーズの指揮官デ・ゼルビが放出を承認することである。その間にディアビーへ舵を切ったが、高額な年俸とレバークーゼンとの競合という壁に突き当たった。それでもスペンスはプランBではない、と同紙は強調する。
原文: "EXCL: Inter are set for club to club talks with Spurs for Djed Spence with opening proposal to follow. Story from two days ago, confirmed as Inter will try again for the English RWB. Spence, keen on move. Decision up to Tottenham on deal conditions."
訳: 「独占:インテルはスペンスの件でスパーズとのクラブ間協議に入る態勢にあり、初回提案がこれに続く。2日前に報じた話が裏付けられた形で、インテルはこのイングランド人右ウイングバックに再挑戦する。スペンスは移籍に乗り気。条件をどうするかの判断はトッテナム側にある」
原文: "Inter, nuovi contatti per Djed Spence. L'operazione con il Tottenham può avanzare concretamente nelle prossime ore."
訳: 「インテル、スペンスをめぐる新たな接触。トッテナムとの交渉は今後数時間で具体的に前進する可能性がある」
判断の基準はダンフリースが置いていった穴の大きさだろう。レアル・マドリードへ去った右ウイングバックは、キブのシステムで攻撃の起点であると同時に、5バックに落ちた際の実質的なサイドバックでもあった。この二重の役割を1人で担える選手が3000万ユーロなら、安くはないが理不尽でもない。
より重要なのは、この夏のインテルが4000万ユーロという数字に二度はじかれている点だ。クリスティアン・ロメロでは合意に達しながら押し切れず、カーティス・ジョーンズにもリヴァプールが同水準を求めている。トッテナムが3000万へ降りてくるなら、今夏インテルが初めて相手の言い値を下げさせた交渉になる。支出の合理性を問われ続けたフロントには、この1000万の差が金額以上の意味を持つと考えられる。
ガゼッタが「スペンスはプランBではない」と書いた根拠は、守備局面での安心感にある。ディアビーが純粋なアタッカーであるのに対し、スペンスは左右をこなし、ワールドカップでは左でもプレーした。3-5-2のウイングバックは攻撃時にウイング、守備時にサイドバックへ変身する役職だ。攻撃力だけで選べば守備が破綻し、守備力だけで選べば前進が止まる。
インテルがこの夏ずっと迷っていたのは、まさにこの配分だったと推察する。プレシーズンで右を務めたアンディ・ディウフは推進力で評価を上げたが、経験値では未知数が残る。スペンスの獲得が成立すれば、キブは「開幕から任せられる右」と「育てながら使える右」を同時に持つことになる。ローテーションの厚みという観点では、これが最も現実的な着地点かもしれない。
ダンフリースがネラッズーリで積み上げたものは、単なるスタッツではなかった。右サイドを何度も一人で走り切ったスプリント、そして「あの位置は彼のもの」という共通認識。その席に、休暇から戻ったばかりのイングランド人が座る。
もっとも、スペンスにとって逆境は初めてではない。トッテナムでの数年間は平坦ではなく、レンタルを経て地位を取り戻した経緯がある。すでにストーンズと言葉を交わしているとガゼッタは伝えており、ミラノには先輩が待つ。押し出されるのではなく自ら望んで来る選手であることは、この移籍にとって小さくない材料だと考えられる。
判断はトッテナムに委ねられた。4000万を守るのか、3000万で手を打つのか。インテルはすでにテーブルの前に座っている。開幕まで11日、この夏最も長引いた交渉が、ようやく相手の返事だけを待つ段階まで来た。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月11日
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