
夏の移籍市場が終盤に入ると、大物の名前の陰で必ず起きることがある。育てた選手に、外から値札が貼られる瞬間だ。トップチームの遠征に帯同し、マンチェスター・シティやユヴェントスを相手に少なくない時間を過ごした19歳。その働きを見ていたのは、ネラッズーリのスタッフだけではなかった。断り方にこそ、クラブが本気で何を守ろうとしているかが表れる。
8月11日、インテルがジャマル・イドリッスー(Jamal Iddrissou)に対する2つのオファーを断ったことが伝わった。手を挙げたのはPSVとバイヤー・レバークーゼン。金額はいずれも500万から600万ユーロ前後だったという。伝えたのは移籍情報を扱うジャーナリストのニコロ・スキーラ(Nicolò Schira)で、FCInterNewsが同日午後にこれを取り上げた。
イドリッスーは2007年生まれのアタッカー。この夏、トップチームの香港およびパースでの遠征に帯同し、マンチェスター・シティ、ACミラン、ユヴェントスを相手にした試合で重要な時間を任された。プレシーズンの序列としては、単なる員数合わせの帯同ではなかったことになる。
インテルがこの2つの提案を断った理由は明快だ。クラブはこの少年に強い期待を寄せており、放出するとしてもより高い金額が前提であり、加えて買い戻し条項を契約に盛り込むことを条件としている。同じ日の午前にはトゥットスポルトも、カマテと並んでイドリッスーの去就に注意を促し、クラブが売却価格を設定していると報じていた。
原文: "Il club nerazzurro, che crede molto nel ragazzo, lo cederebbe per una cifra più alta e solo includendo nell'accordo una clausola di riacquisto."
訳: 「この少年を高く評価しているネラッズーリのクラブは、より高い金額であり、かつ合意に買い戻し条項を含める場合に限って放出するだろう」
単年の収支だけを見れば、下部組織出身の19歳に500万ユーロが提示されたなら、断る理由はほとんどない。育成選手の売却益は取得原価がほぼゼロであるため、そのまま純益として計上できる。財政の合理性を最優先するオークツリー体制のもとで、この種の取引がどれだけ重宝されてきたかは、この夏だけでもキエート、アキンサンミロ、コッキといった名前を並べれば分かる。
にもかかわらず断ったということは、クラブがイドリッスーを「売却益を生む駒」ではなく「戦力になり得る資産」の側に分類していると読める。買い戻し条項を条件に挙げている点も同じ方向を指している。手放すにしても、判断を間違えたときに取り返せる保険をかけておきたい。この慎重さは、過去に安く出した若手が他所で伸びた記憶の裏返しでもあると推察する。
ただし現実として、インテルの前線には既にラウタロ・マルティネス、マルクス・テュラム、ピオ・エスポージト、ボニーが並ぶ。19歳が割って入る余地は、少なくとも今季のセリエAには乏しい。インテルU23という受け皿ができたことで、トップとの往復で育てるという第三の選択肢は用意されたが、それが本人の成長速度に見合うかどうかは別の問題である。
PSVもレバークーゼンも、若い攻撃陣を欧州のトップレベルへ引き上げてきた実績がある。出場機会という一点だけを比べれば、19歳にとって魅力的な話であることは間違いない。クラブが守ろうとしているものと、選手が求めるものが同じとは限らない。この構図は今夏だけでなく、8月末までに何度も再燃する可能性がある。
香港とパースの遠征は、キブにとってスカッドの現在地を測る場だった。マンチェスター・シティ、ACミラン、ユヴェントスという相手は、いずれも若手の実力を測るには十分すぎる負荷を持つ。その3試合で少なくない時間をイドリッスーに与えたという事実は、監督がこの選手を「見るべき対象」として扱っていた証拠になる。
そして今回の拒否は、その評価がフロントとも共有されていることを示している。監督が使い、クラブが手放さない。育成組織を持つクラブにおいて、この2つが一致するケースは実はそう多くない。イドリッスーが今季どこでプレーするかはまだ確定していないが、少なくとも「安く処分される若手」のリストからは外れたと見てよさそうだ。
500万ユーロを断ったクラブは、その判断の正しさを数年かけて証明しなければならない。育成とは、目の前の現金を見送り続ける忍耐のことでもある。19歳の名前が次に見出しになるのは、移籍市場ではなくピッチの上であってほしい。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月11日
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