
抽選会というものは、対戦表を配る儀式であると同時に、しまっておいた記憶の箱を勝手に開けていく儀式でもある。モンテカルロの8つのボールがインテルにもたらしたのは、レアル・マドリードとリヴァプールという難敵の名前だけではなかった。つい先日まで同じロッカールームにいた男たちが、そろって向こう側に立っている。ミラノにとってこの秋は、勝ち点だけを数える秋にはならない。
チャンピオンズリーグ2026-27のリーグフェーズ抽選で、インテル・ミラノは8つの対戦相手のうち3つで、直近まで同じ屋根の下にいた人物と再会することになった。
まずレアル・マドリード。ベルナベウで待つのはジョゼ・モウリーニョ(José Mourinho)だけではない。今夏インテルを離れてマドリードに渡ったデンゼル・ドゥンフリース(Denzel Dumfries)が、かつての仲間たちを迎える側に回る。次にブルッヘ。ヤン・ゾマー(Yann Sommer)は7月に自由契約でベルギーへ移り、2029年までの契約を結んでいる。彼はジュゼッペ・メアッツァに、今度はアウェーのユニフォームで帰ってくる。
そしてこの交錯は、一方通行ではない。今夏インテルに加わったカーティス・ジョーンズ(Curtis Jones)はリヴァプールと当たるが、組み合わせはホームゲームであり、アンフィールドへ里帰りするのではなく、古巣の同僚をミラノに迎える形になる。ブルッヘで一年を過ごして戻ってきたアレクサンダル・スタンコビッチ(Aleksandar Stanković)も同様に、自分を育ててくれたクラブをメアッツァで出迎えることになった。
原文: "Più che affrontare Mourinho, che è una cosa che ho già vissuto, sento di più Denzelone Dumfries... Mi spiace affrontarlo, si è lasciato benissimo con l'Inter, ha fatto tutto per bene. Magari ti fa anche male, preferivo aspettare un pochino. Sommer? Verrà accolto bene da San Siro"
訳: 「モウリーニョと当たること自体はもう経験済みだ。それより僕にはデンゼローネ、ドゥンフリースのほうが響く。彼と戦うのは気が進まない。インテルとはとてもきれいに別れたし、すべてを正しくやってくれた男だ。もしかしたら痛い目に遭わされるかもしれない。もう少し先に取っておきたかった。ゾマー? サン・シーロは彼を温かく迎えるだろう」
ファブリツィオ・ビアジン(Fabrizio Biasin)の言葉で印象的なのは、「モウリーニョより、ドゥンフリースのほうが響く」という順位づけだ。モウリーニョとの再会は物語としては大きいが、彼にとってはすでに何度も経験した既視感のある構図でしかない。対してドゥンフリースは、つい数か月前までピッチの右サイドを上下していた同時代の存在である。距離が近いぶん、感情の解像度が高い。
「きれいに別れた」という評価も、送り出す側の言葉として重い。長く右のレーンを走り続け、大事な試合で決定的な仕事をしてきた選手が、揉めることなくマドリードへ向かった。ベルナベウで対峙する日、ミラノから届くべきなのは敵意ではなく、あのときの走りへの感謝だろう。ビアジンが「痛い目に遭わされるかもしれない」と付け加えたのも、彼の得点力を知り尽くしているからだ。
ヤン・ゾマーの場合、再会の舞台がジュゼッペ・メアッツァであることの意味が大きい。3シーズンで139試合、そのうち66試合をゼロで終えた。セリエAを2度、コッパ・イタリアとスーペルコッパをそれぞれ1度、彼の手のうしろで獲っている。在籍終盤にはミスを取り沙汰される場面もあったが、ビアジンはそれを「トレヴィザーニのせいで不当に扱われた」と表現し、スタジアムは彼を温かく迎えるはずだと語った。
ネラッズーリのサポーターは、この種の場面で情に厚い。相手ゴール前に立つスイス人が最初にボールに触れたとき、メアッツァから何が返ってくるか。試合の結果とは別のところで、この夜は記憶に残るものになると考えられる。ベルギーで新しいキャリアを始めた彼に、まずは拍手が贈られてほしい。
見落とされがちだが、この抽選が生んだ交錯には対称性がある。ドゥンフリースとゾマーがインテルから外へ出た側だとすれば、ジョーンズとスタンコビッチは外から中へ入ってきた側だ。ジョーンズはリヴァプールで育ち、この夏ミラノを選んだ。スタンコビッチはブルッヘで一年を過ごし、その経験を携えてクリスティアン・キブ(Cristian Chivu)のチームに帰ってきた。
つまりインテルは、手放したものと手に入れたものを、同じリーグフェーズのなかで同時に確かめることになる。編成の当否が8試合で決まるとは思わないが、「誰が去り、誰が来たか」という夏の物語に欧州の舞台が答え合わせの場を用意したのは確かだ。ジョーンズとスタンコビッチにとって、これ以上に分かりやすい試金石はない。
同じシャツを着ていた時間は、抽選のボールひとつで簡単に「かつて」になる。それでもベルナベウの右サイドと、メアッツァのゴール前には、確かにネラッズーリの記憶が立っている。良い夜を、ドゥンフリースとゾマーに。そして、良い勝ち点をインテルに。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月28日
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