
ピネティーナの改修が終われば、トップチームとU23は同じ芝を踏むようになる。それでも、下の階から上の階へ上がる最後の一段はあまりに高い。ならば階段の途中に踊り場を作ればいい。9月10日の朝、イタリアの二大スポーツ紙が同時に報じたのは、そういう発想から始まる話だった。舞台はイタリアではなく、国境の外。
『ガゼッタ・デロ・スポルト』が10日付の紙面で、[[オークツリー]]が欧州にもう一つクラブを買う可能性を検討していると報じた。狙いは外国リーグの、できれば1部に所属するクラブ。同紙はそれを「インテルの若手を育て、価値を高めるための完璧なプラットフォーム」と表現している。
昨季誕生した [[インテルU23]] に続く、編成上の二枚目のカードという位置づけだ。同じ日、『コリエレ・デロ・スポルト』はより踏み込んだ数字と時間軸を伝えた。投資規模は2500万から4000万ユーロ。しかも案件のスピードは速く、来季開幕までに決着する可能性も排除されていないという。『コリエレ・デラ・セラ』も同日、オークツリーがすでに予算枠を設定したと報じており、少なくとも三紙が同じ方向を向いている。
興味深いのは、候補地の書きぶりが紙によって微妙に違うことだ。ガゼッタはポルトガル、ベルギー、オランダ、そしてスイスの4リーグを挙げた。一方コリエレ・デロ・スポルトはベルギー、ポルトガル、そして「スペインの2部」を挙げている。共通するのはポルトガルとベルギーの2つ。ここが本命に近いと読むのが自然だろう。
原文: "Finiti i lavori alla Pinetina tra qualche mese, le due entità si mescoleranno allenandosi finalmente nello stesso centro, ma anche per il ragazzo di più belle speranze sarà complesso il passaggio definitivo dal piano di sotto al piano di sopra. Al contrario, uno spazio intermedio sarebbe un trampolino utile"
訳: 「数か月後にピネティーナの改修が終われば、二つの組織はついに同じ施設で練習し、混ざり合うことになる。だが、どれほど有望な若者であっても、下の階から上の階への完全な移行は複雑なものになる。逆に、中間の空間があれば有用な跳躍台になるだろう」(『ガゼッタ・デロ・スポルト』)
原文: "In Spagna, ad esempio, per i sudamericani sono sufficienti due stagioni di tesseramento per richiedere il passaporto spagnolo. Un progetto simile era stato accarezzato anche da Suning. Erano i primi tempi della proprietà cinese, poi tutto si è bloccato"
訳: 「たとえばスペインでは、南米出身者は2シーズン登録されていればスペインのパスポートを申請できる。同様のプロジェクトはスニングも温めていた。中国資本による所有の初期のことで、その後すべてが止まった」(『コリエレ・デロ・スポルト』)
コリエレ・デロ・スポルトが挙げた条件のうち、最も実務的で、最も本音に近いのは選手登録の話だ。買収先のリーグは、EU圏外選手の登録に対する制限が少ないところであること。そしてスペインでは南米出身者が2シーズンでパスポートを申請できる、という具体例がわざわざ添えられている。
これは育成の話であると同時に、明確に在庫管理の話だと考えられる。インテルは南米、とりわけアルゼンチンとブラジルのスカウティングに人と金を割いてきたクラブだ。だが有望株を見つけても、イタリアのEU圏外枠は年間2名。獲得のタイミングを枠が決めてしまう構造がずっとあった。海外に登録先を一つ持てば、その渋滞を迂回できる。2500万から4000万ユーロという価格帯は、クラブとしての戦力を買う額ではない。ライセンスと登録枠を買う額だと読むのが妥当だろう。
そしてコリエレ・デロ・スポルトは、同じ構想を [[スニング]] 時代にも一度描いていたと明かしている。中国資本が去り、米系ファンドが来て、同じ引き出しが再び開いた。所有者は変わっても、クラブが抱える構造的な不足は変わっていないということでもある。
ガゼッタが指摘した最大のハードルは、複数クラブ所有の規制だ。インテルと二つ目のクラブが同じ欧州カップの本大会に出れば、どちらかが排除される。だから買収の検討は「どのクラブが強いか」ではなく「どのクラブなら欧州カップで鉢合わせしないか」という、逆向きの選別になる。
同紙が引いた先例は示唆的だ。シティ・フットボール・グループはマンチェスター・シティと [[パレルモ]] を持ち、レッドブルはザルツブルクとライプツィヒを持つ。イタリアではクラウゼ・グループが [[パルマ]] とポルトガルのカーザ・ピアを保有しており、ガゼッタはそのカーザ・ピアを「小さく、まさにそれゆえに機能的だ」と評した。ネラッズーリはそれをよく知っている、とも。
つまり求められているのは、強豪ではなく、目立たず、しかし1部で試合が組めるクラブである。ポルトガルとベルギーが両紙に共通して挙がるのは偶然ではないと推察する。ベルギーは若手の欧州向けショーケースとして定評があり、ポルトガルは南米選手にとって言語と文化の障壁が最も低い。オランダとスイスが候補に残るのも同じ論理の延長線上にあるだろう。
ガゼッタはこの動きを、オークツリーにとってインテルが短期案件ではないことの証拠だと書いた。実際、同紙が並べた投資リストは競技をまたいでいる。NBAヨーロッパのミラノ・フランチャイズには拘束力のあるオファーを提出済み。オリンピア・ミラノには少数株主としての参入を打診中。そこにもう一つのフットボールクラブが加わる。
オークツリーが2024年にインテルを手にした当時、イタリアでは「ファンドは3年で売り抜ける」という見立てが支配的だった。この2年、クラブの支出は抑制的で、その見立てを補強する材料の方が多かったとも言える。今回の報道が事実なら、その読みは修正を迫られる。ミラノという都市に複数の資産を積み上げ、選手育成の導管を国外に伸ばす。これは売却の準備ではなく、装置の建設に見える。
もっとも、まだ買収対象は決まっていない。ガゼッタ自身が「探索段階」と明記している。ネラッズーリの二つ目の旗がどの国の空に上がるのかは、これから数か月の話だ。
若手を売って帳尻を合わせる時代から、若手を育てる場所ごと買う時代へ。オークツリーが描いているのは、そういう転換なのかもしれない。ただしその踊り場は、上の階へ続く階段であって、若者を置き去りにする物置ではない。使い方次第だ。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年9月10日
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