
夏の移籍市場が動き出すなか、ミラノとリバプールの綱引きが新しい局面へ滑り込んだ。インテルが追い続けるイングランド代表MFカーティス・ジョーンズ(Curtis Jones)をめぐり、両クラブの距離は約1000万ユーロ。だが交渉の本当の主戦場は、提示額そのものではなく「将来の売却時にリバプールへ何パーセント還元するか」という一文に移りつつある。金額の差ではなく、条項の文言が運命を握る——そんな静かな駆け引き
ガゼッタ・デロ・スポルト(La Gazzetta dello Sport)によれば、インテルがジョーンズに本格的に動き出してから、交渉は数字の段階を越えて細部の設計図に入ろうとしている。ネラッズーリは現時点で2000万ユーロの提示にとどまっており、リバプールはそこからさらに最低でも1000万ユーロ上乗せを求めている。額面の差は1000万ユーロ。しかし同紙は、勝負を分けるのは総額そのものよりも「将来の再販売時にリバプール側が受け取る取り分(再販売条項)の割合」になると見ている。
ジョーンズはインテルにとって今年1月の冬市場から追い続けてきた標的だ。当時はダヴィデ・フラッテージ(Davide Frattesi)のノッティンガム・フォレスト移籍が頓挫したことや、リバプールがシーズン途中の中盤放出に難色を示したことが重なり、交渉は先送りされた。それがシーズン終了とともに再燃し、先日はインテルのスポーツディレクター、ピエロ・アウジリオ(Piero Ausilio)自身がジョーンズへの関心をあらためて公言している。さらに重要なのは、ジョーンズがクリスティアン・キブ(Cristian Chivu)の中盤補強リストで、ここ数週間のうちにローマのマニュ・コネ(Manu Koné)を抜いて第一候補に浮上したと報じられた点だ。
リバプール側の事情も追い風になっている。新指揮官アンドニ・イラオラ(Andoni Iraola)はボーンマス時代の秘蔵っ子アレックス・スコット(Alex Scott)の獲得を望んでおり、ガゼッタはこれを「ジョーンズのコピー」と表現した。同型の選手が加われば、ジョーンズの序列はさらに下がる。皮肉にも、それがインテルにとっての思わぬ追い風になりうるという構図だ。
原文: "I Reds ne chiedono almeno 10 di più, ma la vera partita si giocherà anche (e soprattutto) sulla percentuale di futura rivendita."
訳: 「リバプールはさらに最低でも1000万(ユーロ)を求めているが、本当の勝負は将来の再販売条項の割合をめぐって、いやそこでこそ繰り広げられることになる」
インテルが2000万ユーロという数字に固執する背景には、ジョーンズの契約状況がある。同紙によれば彼の契約は2027年6月まで、つまり残り1年という段階に近い。残契約が短い選手ほど、売り手の交渉力は時間とともに削られていく——その原則を踏まえれば、インテルが「2000万ユーロは適正」と判断するのは理にかなった姿勢だと考えられる。一方でリバプールは育成からトップへ引き上げた純血の選手を、相場より安く手放したくはないはずだ。だからこそ両者は総額の1000万ユーロを埋める前に、再販売条項という「将来の利益配分」で折り合いを探ろうとしているのだろう。現金の不足を未来の取り分で補う——財政の制約を抱えるインテルにとって、これは現実的な交渉設計だと推察する。
キブの補強リストでジョーンズがコネを上回ったと報じられた事実は、インテルの中盤観の変化を示しているのかもしれない。剥がす強度を重視するならコネ型のフィジカルが優先されるが、ジョーンズはボールを前進させ、ライン間で受けて違いを作れるタイプだ。配球と推進を兼ねる現代的なセントラルMFを求めるなら、その評価が逆転するのも理解できる。ただしガゼッタは、中盤に二人を同時に補強する余地は当面ないとも伝えている。ヘンリク・ムヒタリアン(Henrikh Mkhitaryan)の契約延長と、技術スタッフが強く残留を望むハカン・チャルハノールの存在が、枠を一つに絞らせているという。ジョーンズを獲るなら、コネは見送る。中盤の一枠をめぐる選択は、そのままキブが描く来季の青写真の輪郭になると考えられる。
交渉の行方を左右しうるもう一つの要素が、リバプール内部の力学だ。新指揮官イラオラが同型のスコットを欲しているなら、ジョーンズは構想の優先順位で下がる。アルネ・スロット(Arne Slot)時代から指揮官との関係は良好とは言えず、指揮官交代も流れを変えなかったと報じられている。出場機会を求める選手と、序列を下げたいクラブ——双方の利害が、移籍という出口で一致しつつある可能性がある。加えてジョーンズは、イタリア移籍を経験したフェデリコ・キエーザ(Federico Chiesa)にイタリアでの生活について尋ねたと伝えられる。ピッチ外の小さな会話が、最後のひと押しになることは珍しくない。条件の交渉と本人の意思、その二つが同じ方向を向き始めているように見える。
額面の差は1000万ユーロ。だが両クラブが本当に削り合っているのは、その数字ではなく一行の条項だ。残契約1年という時計の針、序列を下げかねないイラオラの選択、そしてキエーザに向けられた問い。いくつもの小さな歯車が同じ方向へ回り始めたとき、ジョーンズの行き先はミラノに定まるのか。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年6月14日
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