
カルチョの勢力図は、ピッチの外で動く人事から軋み始めることがある。サッスオーロを率いてきた敏腕がユヴェントスの新最高責任者に座り、その最初の対話相手が旧知のインテル会長だった——この一点が、長く膠着していたミラノとトリノの間に思わぬ通路を開きつつある。狙いはアンドレア・カンビアーゾ、そして久しく恋い焦がれてきたブレーメル
トゥットスポルト(Tuttosport)によれば、ユヴェントスの新最高経営責任者となったジョヴァンニ・カルネヴァーリ(Giovanni Carnevali)が真っ先に取り組むべき課題は、収入の創出だ。チャンピオンズリーグ出場権を逃したことで生じた財政的な穴を、早急に埋めなければならない。その新CEOが就任後ほどなく言葉を交わした相手の一人が、インテル会長で長年の友人でもあるジュゼッペ・マロッタ(Giuseppe Marotta)だったという。
同紙の情報として、マロッタはユヴェントスのアンドレア・カンビアーゾ(Andrea Cambiaso)に狙いを定めているとされる。左を主戦場としながら左右のウイングバックとサイドバックをこなすイタリア代表の汎用性は、デンゼル・ダンフリースを失った右サイドの再設計を迫られるインテルにとって魅力的な選択肢だ。ユヴェントス側もカンビアーゾを「最低4000万ユーロの提示があれば手放しうる」駒と見ているという。ただしインテルはこの金額を高すぎると捉えており、現金だけでの一括取得には慎重だと報じられている。
鍵を握るのは「適切な組み合わせ」だ。トゥットスポルトは、両クラブの実力派ディレクターが互いに有用な複数の名前を近く検討し始めるとし、その候補としてインテルから放出含みのダヴィデ・フラッテージ(Davide Frattesi)やカルロス・アウグスト(Carlos Augusto)の名を挙げた。さらに、かつてインテルが獲得寸前まで迫りながらラオウル・ベッラノーヴァ(Raoul Bellanova)へと舵を切った経緯のあるブレーメル(Bremer)も、カンビアーゾ同様に「インテルが長年抱き続けてきた標的」だと位置づけている。
原文: "Bremer è da sempre un pallino interista, proprio come lo stesso Cambiaso: prima della firma per la Juve, era stato a meno d'un passo dai campioni d'Italia, quindi la virata in direzione Bellanova nelle ultime curve."
訳: 「ブレーメルはカンビアーゾと同じく、インテルが長年抱き続けてきた標的だ。ユヴェントスと契約する前、彼はイタリア王者まであと一歩のところまで来ていた。それが最後の局面でベッラノーヴァの方向へと舵が切られたのだ」
インテルが4000万ユーロを「高い」と見るのは、編成の優先順位を踏まえれば理にかなった反応だと考えられる。右サイドの本命はあくまでアタランタのマルコ・パレストラであり、カンビアーゾはその思想とは異なる「汎用性」の駒だからだ。現金一括での大型投資は、本命との二重投資になりかねない。だからこそ、フラッテージやカルロス・アウグストといった放出含みの駒を対価に組み込み、実質的な現金負担を圧縮するスワップが現実的な落としどころとして浮上しているのだろう。ユヴェントスが月内に5000万ユーロ超の売却収入を求めているなら、現金よりも「即戦力+調整金」という形の方が双方の必要を満たす可能性がある。ただし、選手の評価額や年俸が複雑に絡むスワップは成立難度が高く、現段階ではあくまで構想にとどまると見るのが妥当だ。
カンビアーゾの価値は、左利きでありながら左右両サイドのウイングバックとサイドバックを高水準でこなせる点にある。3-5-2を基本とするインテルにとって、複数ポジションを埋められる選手は負傷離脱やローテーションの局面で計り知れない保険になる。一方で、ダンフリースが右サイドにもたらしていた縦への爆発的な推進力を、カンビアーゾがそのまま代替できるかは慎重に見極めるべき論点だ。彼の持ち味は突破の鋭さよりも局面ごとの判断とボール循環にあり、求められる役割が「推進」なのか「汎用性」なのかで評価は変わってくると考えられる。キブの設計図のなかで、パレストラとカンビアーゾは競合ではなく補完になりうるのか。その答えが、補強の優先順位を最終的に決めるだろう。
この一件で見逃せないのが、ユヴェントスとインテルという宿敵同士の取引が、人間関係を土台に動き始めている点だ。サッスオーロ時代にマロッタやガッリアーニから多くを吸収したと評されるカルネヴァーリと、マロッタは長年の友人とされる。経営者同士の信頼関係は、本来なら感情的に難しい「ライバルクラブ間の主力売買」を、実務的な交渉のテーブルに乗せる潤滑油になりうる。ブレーメルやカンビアーゾのように、過去にインテルが指をくわえて見送った選手が再び話題に上るのも、その通路が開いたからだと推察する。もっとも、ファン感情という別の障壁は依然として高い。宿敵から主力を引き抜く取引が、どこまで現実の輪郭を帯びるのかは、今後数週間の駆け引きにかかっている。
カルネヴァーリの椅子が一つ動いたことで、長く閉ざされていたトリノとミラノの扉がわずかに軋んだ。カンビアーゾ、ブレーメル、そして対価として揺れるフラッテージ。宿敵同士が同じテーブルに着くという珍しい構図は、この夏のセリエAで最も繊細な交渉になるのではないか。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年6月14日
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