
待ち望んだ瞬間が、サン・シーロに訪れた。インテル・ミラノ(Inter Milan)がパルマ(Parma)戦で2-0とリードし、2025-26シーズンのセリエA(Serie A)優勝を事実上確定させた。マルクス・テュラム(Marcus Thuram)が先制点を叩き込み、ヘンリク・ムヒタリアン(Henrikh Mkhitaryan)がこの夜2点目を加える展開——クラブ史上21回目のスクデット、クリスティアン・キヴ(Cristian Chivu)監督の就任1年目での戴冠が、2人のベテランのゴールで現実のものとなった。シモーネ・インザーキ(Simone Inzaghi)体制からの移行を懐疑的に見ていた多くの声を、完全に黙らせる夜になった。
インテルは35節のパルマ戦でテュラムとムヒタリアンのゴールにより2-0でリードを奪い、優勝を事実上確定させた。テュラムはこれで終盤戦のゴールラッシュを継続。3月の代表ウィーク明けから始まった彼の覚醒が、最も大事な夜にも結果に直結した。一方のムヒタリアンは契約満了が決まっている36歳のベテラン——インテルでの最後の数試合に2得点目を刻む、まさに「サン・シーロへの花道」と呼ぶべきゴールとなった。
キヴが昨夏パルマからインテルの監督に就任した際、その経験不足を指摘する声は少なくなかった。インザーキが2つのスクデットと2度のチャンピオンズリーグ(Champions League)決勝進出という実績を残して去った後の難しいバトンを、45歳のルーマニア人指揮官は見事に受け止めてみせた。
シーズンを通じての歩みは決して平坦ではなかった。3戦連続未勝利、W杯プレーオフでのイタリア代表(Italy)の敗退、バストーニ(Alessandro Bastoni)への批判、チャンピオンズリーグでのボドー/グリムト(Bodo/Glimt)への敗退——複数の逆境を、ラウタロ・マルティネス(Lautaro Martinez)が主導したロッカールームミーティング、テュラムの終盤戦の覚醒、フェデリコ・ディマルコ(Federico Dimarco)のリーグ最多アシストといった個人とチームの両面の力で乗り越えてきた。
ローマ(Roma)戦の5-2、コモ(Como)戦の0-2からの逆転、コッパ・イタリア(Coppa Italia)準決勝での3-2の逆転——シーズン後半のドラマチックな勝利の数々が、優勝への確信を積み重ねていった。残るは5月13日のコッパ・イタリア決勝、ラツィオ(Lazio)との一戦。モウリーニョ(Jose Mourinho)以来16年ぶりとなる国内二冠まで、あと1試合だ。
昨夏ジュゼッペ・マロッタ(Beppe Marotta)会長がインザーキの後任にキヴを選んだとき、「経験のないコーチに賭けすぎではないか」という疑念が少なからずあった。パルマでのセリエA経験は1シーズンのみで、ビッグクラブを率いた実績はゼロ。しかしキヴはその「経験不足」を逆手に取り、固定観念に縛られない采配で結果を出し続けた。1月のピサ(Pisa)戦で34分にディマルコを投入して大逆転した試合、コモ戦のコッパ準決勝で65分から3得点を奪った試合——伝統的な監督なら取らない判断が、何度も試合を救ってきた。今季多数のベンチからの得点・アシストを生んだベンチワークは、「経験不足」が「先入観の不在」に変わったときに生まれる新しい指揮の形だ。マロッタの賭けは、見事に的中した。
優勝を引き寄せた2得点が、それぞれ違う意味で象徴的だった。テュラムは年明けの2カ月間セリエA無得点という停滞期を経て、3月以降に怒涛のゴールラッシュで覚醒。クラブが一度は「売却決定」を下した男が、「売却不可」へと立場を逆転させ、その仕上げとして優勝を決定づける先制点を叩き込んだ。一方のムヒタリアンは契約満了で今季限りの退団が決まっている36歳のベテラン。インテルでの最後の数試合に追加点を刻んだことは、サン・シーロに残す最後の置き土産として完璧な形だ。「売却を止めた男」と「契約を更新しない男」が並んで得点する——インテルの夏の決断の正しさと、別れの寂しさが同居する夜になった。
インテルの今季を象徴するのは、リーグ最多の総得点と2位ナポリ(Napoli)との大きな得点差だ。守備でリーグを支配したのではなく、攻撃で突き放したという事実が、「カテナチオの伝統」を過去のものにした。ラウタロとテュラムの2トップ、ディマルコのリーグ最多アシスト、ニコロ・バレッラ(Nicolo Barella)の中盤からの得点貢献、ハカン・チャルハノール(Hakan Calhanoglu)のレジスタとしての複数得点——全員攻撃のシステムが結果として最も効率的だったことを、優勝という形で証明した。ガゼッタ・デッロ・スポルト(Gazzetta dello Sport)が「攻撃のイタリアが守備の神話を打ち破った」と書いたとき、その代表者として真っ先に挙げられたのがキヴのインテルだった。
スクデット確定はゴールではない。5月13日のコッパ・イタリア決勝が控えており、勝てば2009-10のモウリーニョ以来16年ぶりの国内二冠が達成される。決勝の相手はラツィオ。インザーキが指揮を執った古巣であり、本人が「中立で楽しむ」と語る複雑な舞台になる。さらに夏には大規模なスカッド再編が待っている。テュラムの「売却不可」転換、ディマルコの2030年までの延長交渉、コネ(Manu Kone)獲得を巡るローマとの取引、パレストラ(Marco Palestra)への4000万ユーロ投資——スクデットの祝杯を傾ける時間は限られている。来季の連覇に向けた「夏の革命」が、5月13日のコッパ決勝後に本格的に始動する。
「キヴが監督になるとは思わなかった」とモウリーニョが語った男が、サン・シーロに21回目の星を引き寄せた。インザーキの「損害を被った側」という言葉が、ピッチ上の正当な勝利によって書き換えられた夜。テュラムが先制し、ムヒタリアンが続いた——「売却を止めた男」と「最後の置き土産を残す男」が並んだフィナーレ。コッパ決勝へ、そして来季の連覇へ——ネラッズーリの物語は、まだまだ終わらない。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年5月3日
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