
生まれ育った街のクラブで、少年時代からトップチームまでを駆け上がった男が、初めて国境を越えた。イタリア時間8月21日夜、インテルが正式発表。契約は2031年まで。前季のUEFAチャンピオンズリーグでジュゼッペ・メアッツァの音を全身で浴びた記憶が、この決断の引き金になっていた。
インテル・ミラノは8月21日夜、カーティス・ジョーンズ(Curtis Jones)の獲得を公式に発表した。契約期間は2031年6月まで。同日午前にミラノのCONIスポーツ医療センターで診断を受け、待ち構えたサポーターに手を振ったあと、クラブ本部で署名を済ませている。
ジョーンズは2001年生まれのイングランド人MFで、リヴァプールの下部組織からトップチームに上がり、これまでのキャリアをすべてアンフィールドで過ごしてきた。国外移籍は今回が初めてとなる。移籍金は3000万ユーロに500万ユーロのボーナスを加えた条件、年俸は350万ユーロと複数のイタリア媒体が伝えているが、これらの数字はクラブの公式発表に含まれるものではない。
ジョン・ストーンズ、ジェド・スペンスに続く今夏3人目のイングランド人加入であり、クラブ史におけるイングランド人選手としては6人目にあたる。ジョーンズはインテルTVのインタビューで、決め手はサポーターの熱量だったと語った。前季のUEFAチャンピオンズリーグでインテルと対戦した際、ピッチ上でメアッツァの歌声を直に浴びた経験が、決断の核にあったという。
原文: "Assolutamente: sono un ragazzo di Liverpool, uno Scouser e ho trascorso lì tutta la mia vita. A questo punto della mia carriera però volevo fare un passo in più: penso che questo sia il Club perfetto per riuscirci."
訳: 「その通りだ。僕はリヴァプールの人間で、スカウサーで、人生のすべてをあの街で過ごしてきた。でもキャリアのこの地点で、もう一歩先へ進みたかった。それを実現するのに完璧なクラブがここだと思う」
原文: "Io ero sul campo di San Siro e sentivo benissimo quanto cantassero e quanto sostenessero i giocatori. [...] Spero di riuscire a creare un legame speciale anche con i tifosi dell'Inter."
訳: 「僕はサン・シーロのピッチに立っていて、彼らがどれだけ歌い、どれだけ選手を後押ししているかをはっきり感じた。(中略)インテルのサポーターとも特別な絆を築けたらと思っている」
イングランド国内の相場を基準にすれば、この金額は割安の部類に入るという見方がある。ザ・アスレティックはジョーンズの移籍を、現在のプレミアリーグの価格帯からすればインテルにとって好条件の取引だと評した。近年のプレミアリーグでは、代表歴のある20代半ばの中盤が5000万ポンドを超える例も珍しくない。
ただし割安に見える理由は、リヴァプール側の事情にもあると考えられる。ジョーンズは長くローテーション要員としての起用が続いており、出場時間の確保という点で頭打ちになっていた。本人が「もう一歩先へ」と語った背景には、クラブへの愛着と競争環境への渇望が同居していたはずである。売り手も買い手も、そして選手本人も納得できる価格帯に落ち着いた、という整理が自然だろう。
ジョーンズ本人は、キャリアの中で右サイドバックや前線でもプレーした経験があり、複数のポジションをこなせると説明している。そのうえで自分の主目標はゴールとアシストだと明言した。現在のインテルの中盤はニコロ・バレッラ、ハカン・チャルハノール、ピオトル・ジエリンスキが軸を形成しており、そこにアンディ・ディウフやスタンコビッチが控える構図になっている。
キブが求めたのは、この序列に単純に一枚加えることではなく、ボックス内に入っていける中盤という質的な追加だったと考えられる。指揮官は会見で、ジョーンズには「我々に必要な特定の特徴がある」と述べており、汎用性よりも特定機能を評価した言い回しになっていた。加入直後の起用法は未確定だが、モンツァ戦には間に合わず、スタンドからの観戦になる。
クラブ史上、インテルに在籍したイングランド人は今夏以前に3人しかいなかった。それが1シーズンで倍増した。ジョーンズはこの点について、「誇りに思う」としながらも、大事なのはチームとサポーターだと語り、壁に刻まれた名前とトロフィーに説明は要らないと続けた。
編成面から見れば、この英国路線は偶然の産物ではなく、プレミアリーグ市場で行き場を探していた実力者を、相対的に低いコストで拾うという明確な方針の表れだと考えられる。ストーンズはフリー、スペンスとジョーンズは市場価格を下回る条件。オークツリー体制下のインテルが選んだのは、爆買いではなく、価格の歪みを突く買い方である。ただしこの手法が機能するかどうかは、3人がイタリアの守備強度とリズムに適応できるかにかかっている。
リヴァプールを離れる際、ジョーンズは「夢を持って来て、それを叶えて去る」という言葉を残した。次の夢は、まだ言葉になっていない。まずは満員のメアッツァのスタンドから、自分がこれから背負うものの音量を確かめることになる。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月22日
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