
感情を顔に出すタイプではない。長くサン・シーロの右サイドを駆け上がり続けたあいだも、彼はいつも淡々としていた。その男が、組み合わせ抽選の画面に「インテル」の四文字を見つけた瞬間の心臓の動きを、自分の言葉で語っている。ベルナベウで白いユニフォームを着て、かつての仲間と肩をぶつけ合い、意図的に接触を求めながら過ごした90分のあとで。淡々とした表情の裏側に、何が沈んでいたのか。
2026年9月8日のUEFAチャンピオンズリーグ第1節、レアル・マドリード対インテル・ミラノ。この試合は、デンゼル・ダンフリース(Denzel Dumfries)にとって古巣との初めての公式戦だった。試合翌日の9日、オランダの『Ziggo Sport』に応じた彼は、いつもの無表情の裏側にあったものを言葉にしている。
FCInterNewsがこのインタビューを引用して伝えたところによれば、ダンフリースは抽選の瞬間から鼓動が速くなったと認め、対戦相手の全員を知っているという状況の奇妙さを率直に語った。試合中も意図的に接触を求め、押し合いを楽しんだという。
一方で、彼を迎えた側の反応も温かかった。『ガゼッタ・デロ・スポルト』は、ベルナベウに詰めかけたネラッズーリのサポーターがダンフリースへ感謝のこもった敬意を示したと報じている。試合前にはハカン・チャルハノール(Hakan Çalhanoğlu)がインテルTVで「ダンフリースがいてくれてうれしい」と語り、皮肉ではなく再会そのものを歓迎していた。
原文: "Questa partita, naturalmente, è speciale per me. Quando ho visto il sorteggio il mio cuore ha iniziato a battere più forte. È ovviamente strano giocare contro la tua ex squadra, perché conosci tutti. (...) Cercavo ogni tanto il contatto… Qualche spintone qua e là. Questo feeling non sparirà mai, abbiamo vinto tanto insieme"
訳: 「この試合は当然、僕にとって特別だ。抽選を見たとき、心臓が速く打ち始めた。かつての自分のチームと戦うのは、やっぱり奇妙だよ。全員を知っているんだから。(中略)ときどき接触を求めにいった。あちこちで少し押し合ってね。この感覚が消えることは絶対にない。僕らは一緒にたくさん勝ったんだ」
原文: "All'Inter giocavo in un 5-3-2, quindi non avevo nessuno davanti a te. Qui è differente, ma d'altronde ero abituato a giocare anche a quattro in Olanda"
訳: 「インテルでは5-3-2でプレーしていたから、自分の前には誰もいなかった。ここでは違う。とはいえオランダでは4バックでもやっていたから慣れている」
ダンフリースが口にした一節は、彼のインテルでのキャリアを一行で要約している。3-5-2の右ウイングバックとは、タッチライン際の縦一本のレーンをすべて自分の責任で管理する仕事だ。前方に味方がいないということは、支援がない代わりに、判断の自由もすべて自分のものだということでもある。
その環境で彼は、決して技術的な洗練で売る選手ではないまま、欧州の舞台で通用する右サイドになった。今回の発言は懐古ではなく、役割の違いを冷静に説明した技術的なコメントだと読める。モウリーニョの下では前に味方がいる。だから「相手のペナルティエリアまで入っていける」とも彼は言った。負担が減った分、より前で仕事ができるという理解だろう。
この夜、より印象的だったのは実はサポーター側かもしれない。ガゼッタが報じた「感謝のこもった敬意」は、移籍市場が荒れた夏を過ごしたクラブの応援団としては、決して自明の反応ではない。同じ相手にゴールを許せば結果は変わらないという現実を承知したうえで、それでも、かつて同じ色を着た人間を拍手で迎える。
インテルのサポーター文化には、こういう成熟が確かにある。チャルハノールの「ダンフリースがいてくれてうれしい」という言葉も、単なる社交辞令ではなく同じ温度のものだと考えられる。勝敗とは別のところに、二人が積み重ねた時間が残っている。
そのうえで、ピッチの上ではきちんと勝負がついた場面がある。77分、ラウタロ・マルティネス(Lautaro Martínez)が右から入れたボールに、カルロス・アウグストがダンフリースより先に体を入れて押し込んだ。インテルの唯一の得点であり、この試合で最も象徴的な一秒でもあった。
古巣が自分を越えていく瞬間を、彼はゴールの前で見た。感情を顔に出さない男が、そのときどんな表情をしていたかまでは元記事に記載がない。ただ、彼が語った「この感覚は絶対に消えない」という一文と、その1点は、決して矛盾しないはずだ。むしろ両立するからこそ、この種の再会は毎回おもしろい。
ネラッズーリの右サイドを走り続けた男が、白い服で戻ってきて、押し合いを楽しんで、拍手を受けて帰っていった。勝ったのは彼のほうだ。それでも、この夜サン・シーロの側が失ったものは何もない。次にミラノで会うとき、彼はどんな顔でピッチに立つのだろうか。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年9月9日
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