
セリエAで7ポイント、チャンピオンズリーグ初戦で4-1。[[コモ]]の快進撃を支える2人の名前は、いずれも[[インテル・ミラノ]]が本気で欲しがった相手だった。[[ファブリツィオ・ロマーノ]]が自身のYouTubeチャンネルで明かしたのは、その2つの交渉がどこで潰れたかという話。片方は電話一本で、もう片方はロンドンの会談で。ミラノが取り逃したものの輪郭が、いま初めて見えてきた。
ロマーノが語ったのは、直近2つの夏にまたがる二重の裏話である。ひとつは[[ニコ・パス]](Nico Paz)、もうひとつは[[セスク・ファブレガス]](Cesc Fàbregas)。どちらもコモに残り、どちらもいまリーグとヨーロッパで結果を出している。
[[レアル・マドリード]]はニコ・パスに買い戻し条項を持っており、昨夏の時点で選手を引き上げる権利と意思の両方を備えていた。[[ジョゼ・モウリーニョ]]も彼を計算に入れていた。ところが本人はモウリーニョとの電話で、コモに残って主役として成長したいと伝える。レアルは手中にあったはずの駒が自分の意思で外に残る、という状況に直面した。そしてインテルが動く余地は、その瞬間に消えていた。ロマーノの表現では、インテルの話は始まる前に死んでいた。
ファブレガスについては今夏に離脱の兆しはなかったが、2025年には[[バイエル・レヴァークーゼン]]が強く動き、インテルも動いていた。ロンドンでの会談には[[ピエロ・アウジリオ]]が同席している。だが条件が折り合わなかった。数日後に[[FIFAクラブワールドカップ]]を控えていたインテルには時間がなく、投資規模の要求も届かなかった。そして当時のインテルは、[[クリスティアン・キブ]]を強い確信をもって選んだ。
原文: "L'Inter avrebbe voluto provarci, ma Nico Paz è stato onesto sulla sua volontà e il discorso Inter è morto prima di cominciare."
訳: 「インテルは試すつもりだった。だがニコ・パスは自分の意思について正直だった。そしてインテルの話は、始まる前に死んだ」
原文: "Era impossibile procedere e l'Inter ha scelto Chivu con grande convinzione."
訳: 「話を進めることは不可能だった。そしてインテルは、強い確信をもってキブを選んだ」
この裏話がおもしろいのは、レアル・マドリードが法的に有利な立場にありながら、結果として何も動かせなかったという構図にある。買い戻し条項は権利であって、強制力を持つ命令ではない。選手が「残りたい」と言った時点で、マドリードには引き上げるという選択肢と、本人の意欲を削るという代償が同時に発生する。モウリーニョが電話で得た答えは、おそらくその天秤を大きく傾けたと考えられる。
インテルにとってはさらに手が出しにくい状況だった。買い戻し条項が絡む案件は、レアルとコモの二者間が整理されないかぎり第三者が入る隙間がない。そこに本人の残留意思が加われば、交渉を開始する意味自体が失われる。「始まる前に死んだ」という言い方は、感傷ではなく単純な手順の話だと読める。ミラノに残ったのは、悔しさというより手続き上の不可能性だった。
ファブレガスの件は、逆に完全にインテル側の事情で終わっている。ロンドンでアウジリオが同席した会談が実際に行われた以上、関心が本物だったことは疑いにくい。にもかかわらず進まなかった理由として挙がっているのは、時間と金額の2つだ。
クラブワールドカップを数日後に控えた時期の監督交代は、実務として現実的ではない。新指揮官の要求に沿った補強も、大会前に間に合わせるのは無理がある。そしてファブレガスの要求水準は、当時のインテルが用意できる投資規模の外にあった。結果としてインテルはキブを選び、その選択を「強い確信をもって」と表現されるかたちで実行した。1年経ったいま、ファブレガスはセリエA最優秀監督に選出され、コモをCLに導いている。この対比をどう読むかは立場によるが、少なくとも「妥協で選んだ」という筋書きは、ロマーノの証言とは合わないと推察する。
同じ11日、[[ジュゼッペ・ベルゴミ]]がSky Sportで、この話と地続きの指摘をしている。インテルはヨーロッパでリスクの高いサッカーをせざるを得ず、その理由は前線に推進力のある選手がいないため低ブロックから速く出る形を選べない点にあるという見立てだ。そのうえでベルゴミは、クラブがこの数年ニコ・パスのような10番を探し続けてきたこと、今夏も獲得を試みて叶わなかったことに触れ、全員が10番的な中盤にはもっと構造のある選手も必要だと述べた。
つまりニコ・パスの一件は、過去の取り逃しの話であると同時に、現在の編成上の空白を説明する話でもある。ベルナベウでインテルが見せた支配と、そのあとに払った代償は、この空白と無関係ではないと考えられる。ロマーノが明かした「始まる前に死んだ交渉」は、ミラノがまだ埋められていない一枠の履歴書のようなものだ。
買い戻し条項を持つクラブが引き上げられず、会談まで実現したクラブが踏み込めなかった。二度の夏に起きたことは、交渉の勝敗ではなく、タイミングと確信の問題だった。キブを選んだ確信が正しかったかは、これからの数カ月が答えを出す。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年9月11日
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