
放出リストの筆頭に置かれた男が、差し出された3つの脱出口をすべて閉じた。7月下旬まで「代理人が国外の移籍先を探している」と報じられていたフランス代表DFは、香港でのマンチェスター・シティ戦でゴールを決め、いまや自らの居場所をピッチで主張し始めている。クリスティアン・ロメロ獲得の是非を巡ってファンの意見が割れるなか、静かに進行していた逆転劇。
8月2日深夜、FCInterNewsがフランスのMaxiFoot.frの報道として、バンジャマン・パヴァール(Benjamin Pavard)を巡る新たな状況を伝えた。同選手はここ数週間のうちに、ベンフィカ、ガラタサライ、そしてセスク・ファブレガス率いるコモから届いた打診を、いずれも断ったという。理由は単純で、インテルに残ることを望んでいるからだとされる。
この報道は前日の動きとも符合する。8月1日にはル・パリジャン(Le Parisien)が「パヴァールは再起の途上にあり、残留は十分にあり得る」と報じていた。そして8月1日の香港でのマンチェスター・シティ戦、パヴァールは得点を挙げている。試合は1-1で終わり、インテルがPK戦を4-2で制した一戦だ。
一方、クラブ側の視線はまだ完全には定まっていない。8月2日午後、Sky Sport Italiaは今夏のインテルの優先順位が両サイドの補強に移りつつあると報じたうえで、守備陣についてはロメロとパヴァールを巡る評価が現在も進行中だとしている。つまり「ロメロを獲るならパヴァールを出す」という7月時点の図式が、まだ完全には解けていない。
原文: "Lui è determinato più che mai a restare in nerazzurro e, secondo quanto riferiscono i colleghi di MaxiFoot.fr, il calciatore ha rifiutato nelle ultime settimane diverse offerte provenienti da Benfica, Galatasaray e Como."
訳: 「彼はこれまで以上にネラッズーリに残る決意を固めており、MaxiFoot.frの同業者が伝えるところによれば、この選手はここ数週間でベンフィカ、ガラタサライ、コモから届いた複数のオファーを断っている」
7月26日時点のインテルは、パヴァールの売却を前提に守備を再設計しようとしていた。ロメロ獲得の資金を作るための放出候補筆頭。それが当時の位置付けだった。ところが8月に入り、前提そのものが揺らいでいる。
理由は二つあると考えられる。一つは、ジョン・ストーンズの加入で守備の枚数が想定より早く整ったこと。マヌエル・アカンジ、ヤン・ビセック、ストーンズ、そしてアレッサンドロ・バストーニ。ここにパヴァールが残れば、3バックのローテーションは数の上で成立する。もう一つは、ロメロ側の交渉が想定通りに進んでいないことだ。7月28日には「戦線が冷え込んだ」と報じられ、31日には「報道が割れている」状況が伝えられていた。
つまりパヴァール残留は、必ずしも本人の意思だけで生まれた流れではない。ロメロが取れなければ、インテルは既にいる駒で回すしかない。その現実が、放出リストの筆頭を「使える選手」へと押し戻している側面があると推察する。
ベンフィカ、ガラタサライ、コモ。この3クラブの共通点は、いずれもUEFAチャンピオンズリーグ本戦での主軸として計算されにくい環境か、あるいはセリエA内でインテルより格が下と見なされる選択肢だという点だ。パヴァールは1996年生まれ、まだキャリアの終盤に入る年齢ではない。ワールドカップを制した経験を持つDFが、30歳を前にステップダウンを受け入れる理由は乏しい。
同時に、断り続けることには賭けの側面もある。インテルの序列で完全に外れれば、出場機会を失ったまま冬の市場を迎える危険がある。7月時点で代理人が国外の移籍先を探していたという報道が事実なら、本人はその危険を承知のうえで方針を切り替えたことになる。シティ戦のゴールは、その切り替えを裏付ける最も分かりやすい材料だったと言えるだろう。
FCInterNewsがサイト上で実施している読者投票の設問は、この状況を端的に映している。「クティ・ロメロに投資すべきか」という問いに対する選択肢は「イエス、トップクラスの人材だ」と「ノー、パヴァールで十分だ」の二択だ。設問そのものが、パヴァール残留を補強見送りとセットで捉える空気を前提にしている。
ここに、インテルの編成が抱えるジレンマがある。パヴァールを残せば守備の枚数は足りる。しかし枚数が足りることと、スクデット争いに耐えうる質が揃うことは別の話だ。キブは8月1日、公然と補強を求めた。その要求が右サイドだけを指していたのか、守備の質まで含んでいたのか。8月の残り4週間で、その答えは自ずと出るはずだ。
差し出された脱出口を3つ閉じた男が、いま自分の手で扉をこじ開けようとしている。放出候補が主力に戻る夏は珍しくない。だが、それが起きるのはたいてい、クラブ側の計画が思い通りに進まなかったときだ。パヴァールの残留は勝利なのか、それとも妥協の産物なのか。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月3日
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