
右サイドの空席が、ついにサウジアラビアまで手を伸ばさせた。デンゼル・ダンフリースが去ってから約1カ月、クリスティアン・キブが公然と補強を要求し続けたその位置に、突然「1999年生まれのフランス人ウインガー」の名が浮上する。しかも対価として差し出されるのは、すでに構想外を通告された背番号の主。移籍市場の残り1カ月をにらんだ、インテル流の帳尻合わせ。
日付が8月3日に変わった直後、Sky Sport Italiaがインテルの動きを伝えた。アル・イテハドに所属するムサ・ディアビー(Moussa Diaby)について、ネラッズーリが改めて情報収集に入ったという内容だ。ジャンルカ・ディ・マルツィオによれば、技術面での評価そのものはすでに固まっている。問題は別のところにある。サウジアラビアのクラブが支払っている年俸水準はセリエAの相場から大きく外れており、この打診が本格的な交渉へ移行するなら、まず給与の負担をどう設計するかが最初の関門になる。
その数時間前、サウジの日刊紙アッ=リヤーディーヤ(Arriyadiyah)はもう一段踏み込んだ数字を報じていた。インテルはすでにアル・イテハドへ具体的な提案を提出しており、その中身は現金1800万ユーロにクリスティアン・アスラニ(Kristjan Asllani)の選手登録を上乗せするというもの。リヤドのクラブは現在、この提案を検討中だとされる。イタリア側の「情報収集」とサウジ側の「オファー提出」には、明らかな温度差がある。
ディアビーの名がミラノで語られるのは初めてではない。同選手は数カ月前の冬の移籍市場でもインテルと結び付けられており、今回は「新しい名前」というより「戻ってきた名前」に近い。クロトーネ、バイエル・レバークーゼンを経て2024年からアル・イテハドでプレーしている。
原文: "L'Inter è tornata a informarsi per il classe '99 Moussa Diaby, esterno offensivo attualmente in forza all'Al Ittihad. [...] l'apprezzamento tecnico è certificato, anche se la fattibilità dell'operazione resta un capitolo a parte."
訳: 「インテルは1999年生まれのムサ・ディアビー、現在アル・イテハドに所属する攻撃的サイドの選手について、改めて情報収集に入った。(中略)技術面での評価は確立されているが、この案件の実現可能性は別の話だ」
原文: "Si tratta di una proposta da 18 milioni di euro, ai quali si aggiungerebbe il cartellino di Kristian Asllani, che è fuori dal progetto dei nerazzurri."
訳: 「1800万ユーロの提案であり、そこにネラッズーリの構想外となっているクリスティアン・アスラニの選手登録が加わる形になるという」
現金部分の1800万ユーロは、今夏のインテルがこれまで右サイドに提示してきた金額と比較すると控えめだ。ジェド・スペンスには2500万ユーロの予算枠が語られ、マイケル・カヨデには3500万ユーロという評価額が飛び交っていた。それらと並べたとき、1800万という数字は「本命の値段」というより「不要になった選手を組み込んで総額を圧縮する取引」の匂いがする。
アスラニを対価に含める発想も、この文脈で読むと筋は通る。同選手はすでに構想外を通告済みで、市場に出しても即金の買い手が見つかっていない。8月2日にはハル・シティがレンタルでの獲得に関心を示したと報じられたが、インテル側は条件を付けているとされる。移籍金として現金を引き出せない選手を、代わりに他の取引の潤滑油として使う。オークトリー体制下で繰り返されてきた発想であり、今回もその延長線上にあると考えられる。
ただしSkyが指摘した年俸の壁は無視できない。サウジのクラブが支払う給与水準をセリエAのクラブが引き継ぐのは構造的に難しく、選手本人が大幅な減額を受け入れるか、アル・イテハド側が一部を負担するか、いずれかの譲歩がなければ話は前に進まない。この一点だけで、案件が立ち消えになる可能性は十分に残っている。
キブは8月1日、マンチェスター・シティ戦後に「人数を数えてみれば、何が足りないか分かるはずだ」と公然と補強を要求した。ダンフリースの後継が空席のまま、右サイドはアンディ・ディウフを転用してしのいでいるのが現状だ。
もっともディウフの転用は、まだ完成していない。シティ戦を受けてTuttosportは「守備面で説得力を欠く」と指摘し、FCInterNewsも「狂ったアイデアから既成事実へ」という見出しで、この配置がもはや実験ではなく必要に迫られた選択であることを認めている。攻撃で違いを作れる一方、対人守備で剥がされる場面が出る。3-5-2の右ウイングバックは攻守両面を単独で担うポジションであり、片翼だけでは成立しない。
その意味で、ディアビーの起用イメージは慎重に見る必要がある。同選手は本来ウイングであり、ウイングバックとして守備タスクを引き受けた実績が豊富とは言い難い。仮に加入が実現した場合、キブが3-5-2の右で使うのか、それとも試合展開に応じた別の形を用意するのか。この点が整理されないまま補強だけを急げば、ディウフで生じている問題を人を替えて再現するだけになりかねない。
ディアビーはレバークーゼン時代、欧州でも屈指のスピードを持つアタッカーとして評価されていた。アストン・ヴィラを経てサウジへ渡った経緯を踏まえれば、27歳という年齢で獲得できるとしても「ピークを買う補強」ではない。むしろジョン・ストーンズやイヴァン・プロヴェデルと同様、市場価値が下がったタイミングで実績のある選手を拾いにいく、今夏のインテルの一貫した方針に沿う動きだと考えられる。
問題は、その方針が右サイドという最も穴の大きい位置でも通用するかどうかだ。守備の再編ではストーンズという当たりを引いた一方、右サイドではマルコ・パレストラを取り逃がし、アナン・ハライリはメディカルチェックで止まった。二度の失敗を経て、三度目に選ぶのが「サウジ帰りの元スター」だとすれば、それは編成の慎重さの表れであると同時に、選択肢が尽きつつある兆候でもある。
Skyは「情報収集」と言い、サウジ紙は「オファー提出済み」と書く。この温度差が埋まる日が来るかどうかは、年俸という一点にかかっている。開幕まで3週間を切った今、インテルの右サイドは依然として空欄のままだ。キブが数えろと言った人数は、まだ揃っていない。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月3日
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