
ダッラーラのピッチに入って五分後、彼はいつもの場所にいた。ペナルティエリアの中、誰よりも遅れて走り込んでくる二列目。着ているシャツの色は変わっても、ゴールの取り方だけは何ひとつ変わっていなかった。試合後、マイクの前に立った男は笑っていた。そして笑いながら、ミラノで過ごした最後の一年について、これまで誰にも言わなかったことを口にした。
ボローニャ対ラツィオは0-1で終わった。決勝点を挙げたのはダヴィデ・フラッテージ(Davide Frattesi)。途中出場からわずか五分での一撃であり、ラツィオでの初ゴールであり、そのままマン・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。8月半ばにミラノを離れてローマへ移った男は、二試合目で早くも自分の存在理由を証明してみせた。
試合後、ラツィオ・スタイル・チャンネルのカメラの前で、彼はインテル・ミラノでの最後のシーズンについて率直に語っている。素晴らしい時間を過ごした場所であり、いまも全員と連絡を取り合っている場所。それでも新しい刺激を求めて環境を変えることが正しい選択だと、心苦しさとともに考えるようになったのだという。
さらにオプタが同じ日、彼の得点にひとつの記録がついていたことを明らかにした。2023年以降、全大会を通じて途中出場から最も多くのゴールを決めたセリエAの中盤の選手。その数は8。ラザル・サマルジッチ(Lazar Samardzic)と並ぶ最多タイである。ベンチから出てきて試合を決める。それが偶然の積み重ねではなく、彼の職能そのものであることを数字が裏づけた。
ジェンナーロ・ガットゥーゾ(Gennaro Gattuso)も、試合後に長く彼のことを話した。この規模の選手が、多くの困難を抱えたクラブに来ることを受け入れてくれた。感謝すべきだ、と。
原文: "L'ultimo anno con l'Inter mi aveva portato in un momento personale brutto, lo dico a malincuore perché lì sono stato benissimo e sento ancora tutti. A malincuore ho pensato che cambiare aria per trovare nuovi stimoli fosse la scelta giusta; per un giocatore questa cosa è fondamentale."
訳: 「インテルでの最後の一年は、個人的につらい時期に自分を追い込んでいた。心苦しいけれど言わせてもらう。あそこでは本当に素晴らしい時間を過ごしたし、いまでも全員と連絡を取っているから。心苦しさを抱えながら、新しい刺激を求めて環境を変えることが正しい選択なのだと考えるようになった。選手にとって、これは決定的に大事なことなんだ」
原文: "Davide va ringraziato. Con tutto il rispetto per la Lazio, chapeau a un giocatore di questo spessore che ha accettato di venire qua con tutte le difficoltà che abbiamo."
訳: 「ダヴィデには感謝しなければならない。ラツィオに敬意を払ったうえで言うが、これほどの格の選手が、我々が抱えるあらゆる困難を承知でここに来ることを受け入れてくれた。脱帽だ」
オプタが出した記録は、彼のキャリアそのものの要約になっている。先発で90分を支配するタイプではない。試合が煮詰まり、相手の中盤の足が止まり、ペナルティエリアの前に隙間が生まれた瞬間に、その隙間へ全速力で飛び込んでいく。その一点において、彼はセリエAで最も信頼できる選手のひとりだった。
インテルのサポーターがこの数字を見て思い出すのは、おそらく統計ではなく光景のほうだろう。ベンチから立ち上がって上着を脱ぐ姿。ピッチに入っていく後ろ姿。そして数分後にネットが揺れて、スタジアムが爆発する瞬間。それがミラノで何度も繰り返された。月曜の夜、ダッラーラで起きたのは、その光景が別のユニフォームで再生されただけの話である。
彼の発言で印象的なのは、「a malincuore(心苦しいことに)」という表現を短い受け答えのなかで二度使っている点だ。一度目は自分の状況を語るとき、二度目は移籍を決断したことを語るとき。どちらも、インテルへの敬意を守るための言葉として置かれている。
そして「いまでも全員と連絡を取っている」という一文がある。移籍が政治的な決裂ではなく、選手個人の選択として行われたことを示す表現だと考えられる。彼が選んだのは決別ではなく、環境を変えることだった。「新しい冒険への意欲があるとき、人はベストを出せる」という彼自身の言葉が、ダッラーラでそのまま実証された形だ。
8月にミラノを去るとき、彼が残した別れのメッセージには追伸が添えられていた。黄色いゲートは俺のものだからな、と。逆転ゴールを決めたあと、ゴール裏のサポーターのもとへ吠えに行くためによじ登った、あのフェンスのことである。あの日の彼は、点を取った選手というより、スタンドの一員として叫んでいた。
インテリスタにとって、彼がミラノで過ごした日々はゴール数や出場数では測れない。測れるのは、彼がフェンスをよじ登った回数と、その瞬間にスタジアムが出した音の大きさだけだ。ラツィオでも、彼は同じことをするだろう。相手が誰であっても、点を取ったら走っていく。それが彼のやり方なのだから。
ローマで最初のゴールを決めた夜、彼はミラノで過ごした日々を悪く言わなかった。それどころか、心苦しいという言葉を二度も使って、去った理由をきちんと説明してみせた。ありがとう、ダヴィデ。黄色いゲートは、これからもずっと君のものだ。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年8月25日
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