
アレクサンダル・スタンコビッチの名前は、この夏リヴァプールの手元にあるリストにも載っていた。カーティス・ジョーンズをミラノへ送り出す交渉の裏側で、レッズはインテルに対して逆方向の問い合わせを差し込んでいたという。インテル側も一度は買い取り義務付きレンタルという出口を検討した。それでも最後に首を縦に振らなかった理由は、ピッチの上ではなくアッピアーノ・ジェンティーレの指揮官の目にある。そして英国の報道が示唆するのは、この話が2027年にもう一度動きうるという余白。
現地時間9月11日夜、FCInterNewsが英国の移籍情報サイト『Team Talk』の報道を引く形で、この夏の交渉の裏側を伝えた。リヴァプールはカーティス・ジョーンズのインテル移籍をめぐる協議の場を利用し、アレクサンダル・スタンコビッチ(Aleksandar Stankovic)についての情報収集を行っていたという。ジョーンズが実際に放出されるかどうかにかかわらず、リヴァプールは「新たな中盤の選手は不可欠でも中心的な計画でもない」という立場を対外的に崩さなかった。それでも水面下では、この若いセルビア人MFが今夏市場に出るのか、そして本人にその意思があるのかを確かめていた、というのが報道の骨子である。
興味深いのは、インテル側の初期スタンスだ。同サイトによれば、インテルは完全移籍での復帰が決まった直後から、スタンコビッチをほぼ即座に再び放出する案を検討していた。想定された形のひとつが買い取り義務付きのレンタルであり、リヴァプールはその可能性について問い合わせた複数クラブの一つだったとされる。つまりインテルは「売る側の準備」まで進んでいたことになる。
最終的に方針を転換させたのはクリスティアン・キブだった。インテルはスタンコビッチの残留を明言し、指揮官は彼にトップチームで自らを示す機会を与える構えを取った。ただし話はそこで閉じていない。リヴァプールは2027年に改めて中盤の選択肢を見直す可能性があり、この「サッカー選手の息子」の名前は監視リストの上位に残り続けている、と『Team Talk』は伝えている。
原文: "Una delle possibili soluzioni era un prestito con obbligo di riscatto, e il Liverpool era tra i club che si erano informati sulla sua disponibilità."
訳: 「可能性のある解決策のひとつが買い取り義務付きのレンタルであり、リヴァプールは彼の去就について問い合わせていたクラブのなかに含まれていた」
原文: "L'Inter ha infine chiarito che Stankovic sarebbe rimasto nel club nerazzurro, con l'allenatore Cristian Chivu impressionato dal centrocampista e pronto a dargli l'opportunità di mettersi in mostra in prima squadra."
訳: 「インテルは最終的に、スタンコビッチがネラッズーリに残ると明確にした。監督のクリスティアン・キブがこの中盤の選手に感銘を受けており、トップチームで力を示す機会を与える用意があったからだ」
この報道でもっとも重みがあるのは、リヴァプールの関心そのものではない。インテルが一度は「売る」という前提で動いていた、という一点である。ルツェルンとブルッヘでの武者修行を経て買い戻した選手を、帰ってきた直後にまた出そうとしていた。育成と売却を同じ動線に乗せるという意味では、オークツリー体制のインテルらしい合理性ではある。
だが方針は変わった。変えたのはフロントの計算ではなく、監督の目だったと考えられる。キブはプリマヴェーラからトップチームまでを一本の線として見てきた人物であり、若手の見極めにおける発言力は、就任1年目の監督としては異例に大きい。夏の編成でこの一件が起きたのだとすれば、クラブ内での意思決定の重心が、少なくとも若手の去就に関しては監督側にも置かれていることを示している。
リヴァプールがジョーンズの交渉の場で別の選手について尋ねた、という進め方は珍しいものではない。ひとつの案件で開いたチャネルを、別の案件の情報収集に使う。移籍市場では日常的な作法だ。ただしインテル側から見れば、これは警戒すべきサインでもある。ジョーンズはすでにネラッズーリのユニフォームを着てベルナベウのピッチに立った。つまりリヴァプールは、自分たちが手放した選手の行き先に、次の獲得候補を置いているということになる。
2027年という時期の言及も、読み方によっては軽くない。インテルの中盤はハカン・チャルハノールとヘンリク・ムヒタリアンという二本の柱が年齢の面で先を見通しにくく、ペタル・スチッチやアンディ・ディウフといった若手が世代交代の受け皿になる。そのなかでスタンコビッチにどれだけの出場時間が与えられるかは、残留の是非とは別の問題として残り続ける。プレミアリーグの資金力を前提にすれば、出場機会が足りないまま1年が過ぎた場合、次の夏に同じ話がより強い形で戻ってくる可能性があると考えられる。
デヤン・スタンコビッチの息子という肩書きは、ミラノでは祝福にも重荷にもなる。父は2010年のトレブレを構成したメンバーであり、サン・シーロの記憶のなかで神格化されている。その名を背負ってトップチームに定着しようとする若手にとって、比較から逃れる方法はない。
ただし今回の報道は、彼にとって悪い材料ではないはずだ。プレミアリーグの強豪が名前を挙げ、自クラブの監督がそれを拒んだ。市場の評価とクラブ内の評価が同時に示された形であり、若い選手が得られる保証としてはかなり強い部類に入る。問題はここから先で、『Team Talk』が書いた通り、すべては復帰初年度の数字次第である。キブが与えた信頼に対して、スタンコビッチがどう応えるのか。9月14日のウディネーゼ戦から代表ウィークを挟んだ秋の連戦は、その最初の答え合わせの場になる。
売られかけた選手が、監督のひと言で残った。インテルの夏にはそういう分岐がいくつもあったはずで、この一件はそのうち外に漏れた一例に過ぎない。リヴァプールが2027年にもう一度ノックするかどうかは、これからの数十試合が決める。父の背番号ではなく、自分の出場時間で答えを出せるか。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年9月12日
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