
ピエロ・アウジリオが28年の在籍を終えた翌日、インテルは「暫定」という言葉を打ち消しにかかった。ダリオ・バッチンは代役ではなく本命である——オークツリーの意思がそう伝えられる一方で、最優先案件とされたフェデリコ・ディマルコの契約更新については、まだ一度も具体的な接触がないという。前日にスカラ座で本人が漏らした一言と、見事に符合する空白。
2026年9月3日、インテル・ミラノのスポーツ部門の実権はダリオ・バッチン(Dario Baccin)に引き継がれた。前日に退任が正式となったピエロ・アウジリオ(Piero Ausilio)からの引き継ぎは、FCInterNewsの表現によれば「自然な形」で行われている。焦点は、これが穴埋めの人事なのか、それとも設計された継承なのかという点にあった。
ファブリツィオ・ロマーノ(Fabrizio Romano)とマッテオ・モレット(Matteo Moretto)がYouTube上で伝えたところによれば、インテルにとってバッチンの起用は長期的な選択である。オークツリーは継続性を持たせることに満足しており、将来のスポーツディレクターもバッチンだという構図で考えている。つまり「暫定(ad interim)」ではない、というのがこの報道の核心にあたる。
そのバッチンには、就任直後から重い案件が並ぶ。ひとつはカルロス・アウグスト(Carlos Augusto)の契約更新で、こちらは合意が近いとされる。もうひとつがフェデリコ・ディマルコ(Federico Dimarco)の更新問題だ。『ガゼッタ・デロ・スポルト』はこれをインテルの最優先案件と報じたが、FCInterNewsは現時点で具体的な接触は確認されていないとしている。ディマルコ本人も前日のグラン・ガラ・デル・カルチョの場で、まだ話し合いを持っていないと明かしていた。
原文: "Come riportato da Fabrizio Romano e Matteo Moretto su Youtube, per l'Inter quella di Baccin è una scelta a lungo termine."
訳: 「ファブリツィオ・ロマーノとマッテオ・モレットがYouTubeで伝えたところによれば、インテルにとってバッチンの起用は長期的な選択である」
原文: "Fino ad ora non risulta nessun dialogo, con ogni probabilità nella stagione in corso ci saranno delle conversazioni tra le parti per cercare di avanzare."
訳: 「現時点では対話があったという情報はない。おそらく今シーズン中に、話を前に進めるための協議が両者の間で持たれることになる」
クラブが人事について「暫定ではない」とわざわざ発信させるとき、そこには打ち消したい空気が存在している。アウジリオの退任は9月2日に正式化されたが、報じられている経緯は円満とは言いがたい。『ガゼッタ・デロ・スポルト』によれば本人は「大幅な昇給を伴う3年契約」を期待しており、提示された条件との落差が別離の引き金になったとされる。
その直後に内部昇格した人物が「代役」と見なされるのは自然な連想だ。だからこそロマーノとモレットを経由して「長期的な選択」「オークツリーは継続性に満足している」というメッセージが流されたのだと考えられる。逆に言えば、このメッセージが必要だった時点で、外部から新たな責任者を招くという選択肢も一度はテーブルに載っていた可能性がある。『トゥットスポルト』は「Head of football」の設置という選択肢にも触れており、バッチンの上に別の職位が置かれる余地は残っていると読める。
同じ9月3日に、2つの報道が正反対の空気を伝えている。『ガゼッタ・デロ・スポルト』は「バッチンにとってディマルコの更新は直ちに取り組むべき案件であり、インテルにとって最優先だ」とした。一方でFCInterNewsは「現時点で対話はない」と書いた。
この2つは必ずしも矛盾しない。優先度が高いことと、実際に交渉が始まっていることは別の話だからだ。ただし、その「まだ何も始まっていない」という状態を、前日にディマルコ本人がスカラ座の壇上で口にしてしまった意味は小さくない。セリエAの最優秀選手に選ばれたその日に、自分の契約については何も聞かされていないと語る——これはクラブにとって最も避けたかった絵柄だったと考えられる。
契約が2027年満了、インテル側のオプション行使で2028年まで延ばせるという構造上、クラブが急ぐ必要はまだない。だが左サイドの絶対的支柱であり、この夏バルセロナから交換案の対象として名前を挙げられた選手を、宙吊りのまま長く置くことのリスクは別に存在する。
バッチンは2017年に副スポーツディレクターとして加入し、南米スカウティングとU23プロジェクトを担ってきた人物だとされる。つまり、彼の実績は「発掘」と「育成の受け皿づくり」の側にある。一方で今回いきなり手渡されたのは、既存の主力をどう繋ぎ止めるかという「保持」の仕事だ。得意分野とは必ずしも重ならない。
カルロス・アウグストの更新が先に着地しそうだという事実は、その意味で興味深い。年俸規模と交渉の複雑さで言えば、カルロス・アウグストとディマルコでは重みがまったく違う。簡単な案件から順に片づいているだけ、という見方もできれば、バッチン体制が実務として機能し始めた証拠と見ることもできる。オークツリーが掲げた「継続性」が本物かどうかは、ディマルコの更新に具体的な数字が乗る日まで判定を保留すべきだろう。
アウジリオが去り、バッチンが座った。クラブは「これは継続だ」と言い、その同じ日に、最優先とされた案件はまだ動いていないことが明らかになった。継続性とは肩書きの連続ではなく、約束が期日通りに履行されることだ。バッチンの最初の仕事は、その定義を証明することになる。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年9月4日
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