
アーゼン相手の16対0という数字だけを見れば、ただの夏の景気づけだ。だがガゼッタ・デッロ・スポルトは、あの90分の中にクリスティアン・キブが仕込んだ「新インテル」の設計思想を読み取った。GKは序列ではなく2枚看板、ディウフは右のレーンへ、バストーニには新たな引き出し。補強が遅れる今だからこそ、指揮官は内側から答えを探し始めている。
ガゼッタ・デッロ・スポルト(La Gazzetta dello Sport)は7月23日付の記事で、ドイツ合宿中のインテルでクリスティアン・キブが進める布陣実験を整理した。基準システムはあくまで3-5-2のまま。そのうえで、ローテーションの拡充と緊急時への備えを目的に、複数の「代替解」がテストされているという。
最も目を引くのはアンディ・ディウフの右ウイングバック起用だ。SVアーゼン戦の後半、デンゼル・ダンフリースが長く務めたレーンに入ったフランス人MFは、2ゴール1アシストと攻撃面で結果を残した。本職ではないものの、ガゼッタは「キブにとって貴重なリソースになり得る」と評価する。同様のテストはルイス・エンヒキにも行われ、右と左の両サイドで起用された。
守備陣ではカルロス・アウグストを3バック左に置き、アレッサンドロ・バストーニを中央へスライドさせる案が検討されている。中盤ではアレクサンダル・スタンコビッチがアンカーで試され、ハカン・チャルハノールの代役候補と位置づけられた。そしてGKは、ヤン・ゾマー退団後の新体制として、ジョゼップ・マルティネスを先発としつつイヴァン・プロヴェデルと交互に起用する「2枚看板」を敷く方針だという。
原文: "Il sistema di riferimento resta il 3-5-2, anche se il tecnico nerazzurro sta valutando alternative utili sia per ampliare le rotazioni sia per affrontare eventuali situazioni di emergenza."
訳: 「基準となるシステムはあくまで3-5-2だが、ネラッズーリの指揮官はローテーションを広げるため、そして不測の緊急事態に対応するための有効な代替案を検討している」
原文: "Per Chivu la concorrenza tra i pali rappresenta una risorsa, soprattutto in una stagione lunga e ricca di impegni."
訳: 「キブにとってゴールマウスの競争はリソースであり、長く過密なシーズンではなおさらだ」
インテルのGK運用は、ハンダノビッチからゾマーまで「絶対的な1番手+控え」が伝統だった。マルティネスとプロヴェデルを交互に使う構想が実現すれば、クラブの文化としては小さくない転換になる。セリエA、コッパ・イタリア、UEFAチャンピオンズリーグを戦う過密日程を考えれば合理的だが、GKというポジションは連続性が信頼に直結するだけに、リスクも伴う。コッリーナの時代から議論されてきた「守護神は一人」という常識にキブがどこまで挑むのか、公式戦が始まれば真価が問われると考えられる。
ディウフの右WB案が最初に報じられたのは7月21日で、当時は「パッツァ・イデア(突飛な発想)」の域を出なかった。それから48時間、アーゼン戦という低強度のテストとはいえ、数字という形で最初の裏付けが出たことになる。背景にあるのは市場の停滞だ。スペンスは査定が高騰し、ドゥエらの代替案も決め手を欠く。外から来ないなら内側で作る、というのがキブの現実解であり、ディウフが右で計算できるなら補強の優先順位そのものが動く可能性がある。ただし親善試合の相手のレベルを踏まえれば、この評価はまだ暫定値と見るべきだろう。
カルロス・アウグストを左に置きバストーニを中央へ、という構想は、単なるポジション遊びではない。インテルは現在、守備の大型補強としてクリスティアン・ロメロとの交渉を進めているが、トッテナムとの条件面の溝は埋まっていない。ガゼッタが「補強が遅れた場合に備えた内部解」と位置づけている通り、この案は交渉が長期化した際のプランBとして機能すると推察される。裏を返せば、バストーニの中央適性が確認できれば、フロントは市場で焦って高値をつかむ必要がなくなる。ピッチ上の実験が、交渉のテーブルでの強気にもつながる構図だ。
16対0の狂騒の裏で、キブは静かに来季の骨格を組み上げている。外からの補強を待ちながら、内側の引き出しを増やす。この二正面作戦が実を結ぶのか、それとも器用貧乏に終わるのか。8月22日のモンツァ戦、答え合わせはもう1か月後に迫っている。
スポーツ×ITの会社でバックエンドエンジニア兼マネージャーとして勤務。インテル関連の情報を中心に発信しています。
最終更新: 2026年7月23日
© 2025 nero15.dev. All rights reserved.